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情報工学専攻平田晃正准教授らのグループが、75歳以上の熱中症リスク上昇を数値実験により立証

カテゴリ:ニュース|2014年08月21日掲載


名古屋工業大学情報工学専攻の平田晃正准教授、ラークソイルッカ特任准教授、野村知輝君(本学大学院卒業生)、浅野陽平君(情報工学専攻前期課程1年生)が行った研究で、後期高齢者(75歳以上)が熱中症になりやすい要因の一つが、体内深部に存在する温度センサーの劣化であり、それに伴い熱中症のリスクが上昇することを立証しました。

現状
熱中症による死者数は65歳以上の後期高齢者が約8割を占め、年齢別では後期高齢者の死者数が多いことが報告されています。これまで、高齢者の皮膚温度センサーの劣化については指摘されており、研究者のグループでも前期高齢者(65歳相当)における熱中症リスク要因の上昇を指摘、シミュレーションと従来の測定結果との比較により、その知見を立証していました。しかしながら、熱中症死者が最大となる後期高齢者においてリスクが更に高まる要因については、十分検討されていませんでした。

研究成果
人の体温は、体温調節中枢(脳の視床下部に存在)により制御されています。体温調整中枢は、①皮膚に存在する温度センサーからの情報と②体内深部(腹部内蔵、骨、視床下部など)に存在する温度センサーからの情報を総合的に処理し、体温を保つように指令を出します。今回の研究では、過去の文献で報告された実測データを処理することにより、後期高齢者は、皮膚温度センサーの感度が劣化するのみならず、体内深部の温度変化を十分感知できておらず(若者に比べて約0.6 ℃の劣化)、結果として一定の体温上昇があるまで体温調整機能が動作しないことを明らかにしました。この知見をこれまでに構築してきた人体の組織構成を考慮した人体モデルに対する物理シミュレーション技術に組み込み、真夏日の環境を模擬し、体温を時間変化、年齢依存性を、スーパーコンピュータを用いて解析を行いました。この結果、後期高齢者では、若年者や前期高齢者に比べて体温調整機能が動作しづらく、体温が上昇しやすいことを指摘しました。一例として、気温が32.5度に上がった際、体温は、20代の若者ならば0.17度の上昇にとどまるものの、後期高齢者は4倍近い0.66度上昇した。また、気温37.5度の場合、若者が0.46度の上昇に対して、後期高齢者は0.95度と2倍以上でした。 気温が35度の場合の解析例を図に示します。

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気温35.0℃、湿度60%での体温の時間変化

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気温35.0℃、湿度60%での発汗率の時間変化

今回得られた結果は、後期高齢者は外気温の変化を感じないだけではなく、自身の体温上昇そのものも感じにくいことを示しています。これは、前期高齢者における皮膚知覚の劣化による影響が支配的であることとは異なります。従って、後期高齢者が体温上昇を感じたときには若年者あるいは前期高齢者に比べて、体温上昇が生じている可能性があります。この知見は、従来からも言われてきた対策の中でも、まめな周辺環境(気温、湿度)確認、②周り方の気配りが必要なことを示すものです。

なお、本解析には、東北大学サイバーサイエンスセンターにご協力頂きました。


 


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