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電気泳動する非イオン性高分子微粒子によりカラー電着塗装に成功 -下塗り、中塗り、上塗りを一度に行う電着革命 -

カテゴリ:プレスリリース|2016年09月08日掲載


 国立大学法人名古屋工業大学の生命・応用化学専攻 高須昭則教授樋口真弘教授、および大学院生の杢出大樹氏は、電気泳動する非イオン性の高分子微粒子を使って、1段階でステンレス基盤をカラー電着塗装※1(電気泳動堆積:EPD)する技術を開発しました。

研究の背景

 従来、自動車等の防錆を主目的として広く使用されている電着塗装は原理上、塗膜の色や被塗物の材質に大きな制限があります。電着塗装において、下塗りのカチオン型電着塗装は黒色のため、その後、まずカラーのベースとなる白~グレー系の中塗りと、カラー・耐候用途の上塗り工程が必要でした。中塗り・上塗り工程においては、下塗り塗膜が存在するために被塗物に通電されず、電着塗装は行えませんでした。一方、アニオン型電着塗装においては、塗膜が透明で耐候性が高いという利点がありますが、原理上、塗膜自身が酸性であるため、被塗物の材質において大部分を占める鉄は錆び、防錆用途としては使えないことが問題となっていました。

研究の成果

 本研究は、上記従来の問題を解決すると同時に視認される有彩光色が構造色※2を呈する光発光新材料であり、電気化学的安定性、分散安定性に優れた非イオン性(中性)の高分子微粒子からなる電着塗料組成物を提供することができます。

見込まれる効果

 本研究を応用すれば、下塗り、中塗り、および上塗りの工程を同時に行うことができ、大幅な省エネ効果が期待できます。構造色は、高分子微粒子のサイズを100nm~500nmの範囲で制御することで色の3原色(赤、青、緑)が制御できます。さらに、塗料が中性であり、塗装設備の腐食、損傷を大幅に抑制できます。今回の技術は電着塗装の省ステップ化・短時間化を実現し、省エネルギーへ大きく貢献する可能性があります。

 この成果は9月14日から始まる第65回高分子討論会において杢出大樹氏が発表予定です。

  

電着.png

図:ステンレス基盤のカラー電着の様子

※1 電着塗装
 製品を水溶性の樹脂を溶かした液中に入れてメッキのように電気を流し付着させた樹脂を乾燥させ、熱硬化(160~180℃)させるものを指す。電着メッキとも呼ばれるが、析出した膜はあくまで樹脂であり、よって「塗装」である。塗膜はホームセンターで売っている赤や青のペンキと同じ樹脂成分である。付着した膜が金属のものが「メッキ」である。例えば銅メッキ、金メッキなどは金属である。一般に自動車製造過程のシャーシの段階でサビ止めを兼ねて施される。

※2 構造色
 構造色は、光の波長あるいはそれ以下の微細構造による発色現象を指す。身近な構造色にはコンパクトディスクやシャボン玉などが挙げられる。コンパクトディスクやシャボン玉には、それ自身には色がついていないが、その微細な構造によって光が干渉するため、色づいて見える。構造色の特徴として、見る角度に応じて、様々な色彩が見られることが挙げられる。色素や顔料による発色と異なり、紫外線などにより脱色することがなく、繊維や自動車の塗装など工業的応用研究が期待されている。

  

【この件に関するお問い合わせ】

  国立大学法人名古屋工業大学 生命・応用化学専攻 教授 高須昭則
 Tel: 052-735-7159 e-mail: takasu.akinori(*)nitech.ac.jp

(*)を@に変換して送信下さい。


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