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世界初!光学活性アレニルニトリル化合物の効率的かつ安定した合成に成功―医農薬品類のコストダウン・工業化への応用に期待-

カテゴリ:プレスリリース|2017年06月26日掲載


発表のポイント

  • 世界で初めて光学活性アレニルニトリル化合物の高立体選択的合成法を開発
  • パラジウム触媒により安定した合成を実現
  • 医農薬品類のコストダウンや工業化への応用に期待

概要

 最近、医農薬品などに広く使用されている光学活性化合物とは、構造式が同じで左右対称な一対の化合物のことで、いわば右手と左手のようなものです。見た目は似ていても生体への作用が全く異なるため、医農薬品類のコストダウンや副作用の低減を実現するためには、有用な効果を持つ方の物質だけを効率良く選んで合成する方法(高立体選択的合成法)の確立が求められます。
 今回、名古屋工業大学大学院工学研究科の中村修一准教授と大阪大学大学院理学研究科の舩橋靖博教授らは光学活性化合物の高立体選択的合成を行うための物質として、アレニルニトリル(図1)に着目しました。アレニルニトリルは、抗生物質や胃腸薬などに含まれるアレン部位と、精神疾患等の治療薬や除草剤などに含まれるニトリル部位を有した化合物です。2つの有用部位を併せ持つことで、他の物質との合成時に新たな薬効が生まれる可能性が期待されますが、有用な効果を生み出す立体配置の制御(立体制御)が難しく、これまでアレニルニトリルを用いた立体選択合成は未開拓の研究領域でした。そこで中村准教授らは、物質の結合を安定的に形成できるパラジウム触媒を高立体選択合成に活用する手法を考えました。膨大な配置パターンの中から作り出した11種類の触媒をスクリーニング(選別)し、その中から高立体選択合成に最適な配置を持つ触媒を見つけ出しました(図2)。このパラジウム触媒を用いて、今回、医薬品の原料として広く使われているイミンとアレニルニトリルの高立体選択的反応に世界で初めて成功しました(図3)。
 この反応によって得られた化合物の活用法は現状未知数ですが、今後の研究により、医農薬品類のコストダウンが期待されるだけでなく、新薬開発の可能性も秘めています。またこの合成は、通常ならばミリ(mg)単位での合成スケールのところ、グラム(g)単位での合成に成功しており、キロ(kg)単位での大きな合成スケールにも適用可能であると考えられるため、液晶材料など工業化への応用も期待されます。

アレニルニトリル.jpg
図1 アレニルニトリルの構造式
パラジウム触媒.jpg
図2 高立体選択的合成に適した配置を持つパラジウム触媒

アレニルニトリルを用いたイミン合成法.jpg
図3 今回成功した高立体選択的合成法

論文情報

    • 雑誌名:Angewandte Chemie International Edition
    • 論文タイトル:Catalytic Enantioselective Reaction of Allenylnitriles with Imines Using Chiral Bis(imidazoline)s-Palladium(II) Pincer Complexes
    • 著者:Masaru Kondo, Masashi Omori, Tsubasa Hatanaka, Yasuhiro Funahashi, Shuichi Nakamura
    • DOI番号:10.1002/anie.201702429
    • URL:http://dx.doi.org/10.1002/anie.201704133

お問い合わせ

研究に関すること

名古屋工業大学大学院工学研究科 生命・応用化学専攻/材料科学フロンティア研究院
准教授 中村修一
TEL:052-735-5245  E-mail:snakamur[at]nitech.ac.jp

報道に関すること

国立大学法人名古屋工業大学 企画広報課 広報室
牧野円香
TEL:052-735-5322  E-mail:pr[at]adm.nitech.ac.jp

*[at]を@に置き換えてください


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中村修一准教授プロフィール - 名工大研究者データベース
中村研究室ホームページ


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