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学長のことば 平成27年度 学位記授与式 式辞(平成28年3月)

IMG_2292.JPGのサムネイル画像皆さん、本日はご卒業おめでとうございます。ここに、博士35名、修士621名、学士949名、総計1,605名の皆さんに学位を授与致しました。ご臨席を賜りましたご来賓の皆様ならびに列席の理事・副学長、各部局長をはじめとする教職員一同、無事学位を取得されたことに心よりお慶びを申し上げます。そして、50名の留学生の皆さん、母国から遠く離れた不慣れな異国の地で学生生活を送り、日々、学業に研鑽を積まれたことに、Congratulations! そう申し上げたいと思います。また、第二部の20名の皆さん、34名の社会人学生の皆さんには、仕事と学業との両立を立派に成し遂げられた強い意志と努力に対して、心より敬意を表します。もとより、皆さんの今日があるのは、ご家族の温かい支え、友人の協力、教職員や先輩方の指導、助言があったからに他なりません。皆さんを支えたこれらの方々に感謝し、今日の喜びをともに分かち合って頂きたいと思います。名古屋工業大学を代表して、ご家族ならびに関係の皆様よりいただいた、多大なご支援に対し、厚く御礼を申し上げます。

名工大は、前身である名古屋高等工業学校時代の明治41年、初めての卒業生54名を送り出して以来、7万人を超える優れた卒業生を輩出し、磐石な地位を築いてきました。皆さんたちの先輩は、産業界、大学・研究機関、官公庁などで素晴らしい活躍をされています。先輩たちは、社会人となられた皆さんを、期待をもって温かく迎えてくれるでしょう。名工大同窓生としての誇りをもち、その期待に大いに応えてください。また、大学院に進学する皆さんは、さらに研究に邁進し、学術に磨きをかけてください。

皆さんは、名工大において、厳しい授業・実験・実習、研究指導、また、課外活動、学外での研究発表などの体験を通して、多くの知識を吸収し、自ら考える力を養い、知と技能、教養、表現力など、将来、工学技術者・研究者として成長するための様々な能力を身につけ、研鑽を積んでこられました。そして、立派にそれぞれの学位を取得され、本日を起点として、新たな道を歩もうとしています。その道の先に、どんな人生が待ち受けているか、不安とともに新たな夢や希望にきっと胸を膨らませていることでしょう。

卒業という人生の転換点は、これまでを振り返り、改めて自分を見つめ直す良い機会です。

ではまず、皆さんが、過ごした年月はどのような時代の流れの中にあったのでしょうか。世界での出来事をキーワードでひろってみると、アラブの春、テロ、難民、欧州債務危機、ウクライナ危機、シェール革命、BRICs、中国経済の減速、IoTなど、政治、経済、社会の変化が急速に起きています。そして、わが国は、5年前、東日本大震災という未曽有の危機を経験しました。この体験を通して、わたしたちは、人生観、価値観を見つめ直し、そして何より人のつながりの大切さを再認識しました。そして、アベノミクス、デフレ脱却、規制緩和、TPP、マイナス金利など、わが国の経済再生に向けた一連の動きが際立っています。一方、ものづくりの世界的な集積地であるこの地域に目を転ずれば、円安、株高などの影響もあり、経済活動は上向きに転じました。さらに、ノーベル賞を受賞したLEDとともに、「リニア」「FCV」「MRJ」が将来を明るく照らす星として輝いています。

では、皆さん自身はどう変わったでしょうか。名工大に入学した時に抱いていた夢や希望は、あるものは現実的な姿となって将来の具体的な目標に変わり、あるものは色あせてしまい、また、あるものは新たな夢に変わってきたのではないかと思います。

皆さんは次の言葉をお聞きになったことがあるでしょうか。

信念は思考になる
思考は言葉になる
言葉は行動になる
行動は習慣になる
習慣は人格になる
人格は運命になる

インドの賢人、マハトマ・ガンジーの言葉です。元はヒンズー教の教えとも言われ、英国初の女性首相、マーガレット・サッチャーも別のフレーズで引用した有名な言葉です。信念が運命に至るまでの過程を示し、たいへん示唆に富んだ言葉です。

ここで、信念から運命に至るプロセスを、私たちにも馴染み深い大先輩である、トヨタ生産方式を生みだした大野耐一さんを例に、具体的に紹介したいと思います。本学の名誉教授若山滋先生が「大野耐一、工人たちの武士道」という著書の中で、様々なエピソードを交えて著されています。

大野さんは、機械加工と組み立ての製造責任者になったとき、ひとつの信念をもっておられました。それは、「生産方式の改善は、部分的な効率化ではなく、全体が流れるようにすることだ」というものでした。そして、昭和31年、フォード、GMの生産工程視察のため、米国を訪れたとき、大野さんが着目した場所は、街中の大型のスーパーマーケットでした。当時世界を席巻していた大量生産方式ではなく、必要なものを必要なときに必要なだけ入手することができる、これぞ豊田喜一郎が提唱した「ジャストインタイム」であると、気づいたのです。そして徹底的に無駄を省く思考が、今では世界で通用する「かんばん」や「あんどん」という独特の方式を取り入れた生産ラインの考え方となり、「かいぜん」へと結びついて「多品種少量生産ライン」という形に結実します。その後、この一企業で導入された生産方式は世界に広がり、グローバルスタンダードとなり、デジタル時代の申し子であるビルゲイツにも影響を与えました。

「現場が俺を呼んでいる」というほど、大野さんは現場を大切にしておられました。現場で「気づき」、またあるときは、作業員の言葉に「気づかされ」、さらに、他社の生産現場を直接見聞きして新たな「気づき」に出会う、そうしたエピソードが数多く紹介されています。もちろん、「気づき」だけでは生産ラインが生まれたわけではありません。その先には「学び」があり、「学ぶ」ことから様々な「気づき」の機会が生まれます。「学び」と「気づき」のフィードバックを繰り返し、信念は思考となり、それが行動に結びつき、行動を繰り返すうちに習慣となり、そうして習慣を身につけることによって人格が形成されていくのでしょう。

今、急速なICTと人工知能の進化は大野さんが追求した「ものづくり」現場を大きく変え、IoTによる第四次産業革命と言われる時代を迎えています。皆さんにはぜひとも第二、第三の大野耐一を目指していただきたい。とはいっても、全員が易々となれるわけではありません。かのローマ帝国の礎を築いたジュリアス=シーザーが言ったように、"多くの人は見たいと思う現実しか見ない"傾向にあります。

「気づき」と「学び」を懸命にフィードバックしながら、つねに観察眼を鍛練して「本質」を見抜く力を養ってください。そうすれば、次に自分が何を行動すべきか、見たいと思う以外のものが自ずと見えてきます。学びの姿勢を崩さずに自らを磨き、現場での体験を通じて「気づき」を大切にし、社会の変化に鋭敏に対応できる工学技術者・研究者に成長されることを心から期待しています。これを私の餞の言葉として、本日、学位を取得された皆さんへ贈りたいと思います。

 名古屋工業大学は、新たなスタートを切る皆さんをこれからも応援していきます。そして、皆さんに続く優秀な人材を世に送り出すために、永年の伝統と誇りを守りながらもそれに甘んじることなく、変化する社会・産業界の期待に応え、世界に伍していける大学に進化してまいります。

皆さんのご健闘を祈念しています。

本日は、誠におめでとうございます。

平成28年3月23日

名古屋工業大学長 鵜飼裕之


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