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学長のことば 平成28年度 学位記授与式 式辞(平成29年3月)

卒業式2017.jpg 本日はご卒業おめでとうございます。ここに、博士37名、修士631名、学士925名、総計1593名の皆さんに学位を授与致しました。ご臨席を賜りましたご来賓の皆様ならびに列席の理事・副学長、各部局長をはじめ教職員一同、無事学位を取得されたことに心よりお慶びを申し上げます。留学生の皆さん、Congratulations! 遠く母国を離れ、言葉、文化、習慣の異なる日本で生活しながら勉学に励まれた努力を称えたいと思います。また、働きながら学業に研鑽を積まれた社会人学生の皆さんには、その強い意思と弛まない努力に心より敬意を表します。もとより、皆さんが今日あるのは、ご家族の物心両面での支えの他、皆さんを取り巻く様々な方々の理解と協力があったからに他なりません。皆さんを温かく見守ってくれたこれらの方々に感謝の気持ちを伝え、ともに喜びを分かち合って頂きたいと思います。

 英語では卒業のことをGraduation、また、アメリカでは学位授与式のことをCommencementとも言います。Graduationには、その語源から階段を一歩上る意味があるとされ、Commencementは始まりを意味しています。皆さんにとって今日は、人生において新たな高みをめざして一歩踏み出す日です。大学院へと歩みを進める人は、さらに学術の高みをめざして研鑽に励んで下さい。また、社会に出て新たな道を歩もうとしている人は、職場でのキャリアを積み重ね、高みをめざして下さい。皆さんの先輩たちは、産業界、大学・研究機関、官公庁など様々な場所で素晴らしい活躍をされています。先輩たちは期待をもって皆さんを温かく迎えてくれることでしょう。これからは、名工大同窓生としての誇りをもち、その期待に大いに応えてください。

 さて、英国のEU離脱、トランプ現象、大企業の経営危機など政治、経済、社会の世界では、予測不能な出来事が起きています。科学技術の世界はどうでしょうか。確かなことが二つあります。それは、科学技術の複合化とその変化の速さです。

 これまで、人類は科学技術によって様々な人工物を作り上げてきました。それらは時代とともにどんどん複雑になり、また、同時に、全く異なったもの同士が結び付いて新たなものが生み出されてきました。ロボット、スマホなどはあらゆる工学分野が統合し複合化した人工物です。さらに、生命、サービスや金融の分野も工学と融合しています。今後、科学技術は人文社会、自然科学の枠を超えてますます複合化していくでしょう。

 第四次産業革命、「超スマート社会」の実現 Society5.0など産業・社会は大きな変革の時を迎えています。その背景にあるのがICTの進展です。最近では、AI、Big Data、IoTなどが注目を浴びていますが、それらはこれまでの技術の発展に比べて飛躍的に速く、指数的に変化していると言われています。このICTの進化は、単に情報学の発展だけに帰するのものではありません。情報を処理、通信するハードウェア(半導体)の集積化はもちろんのこと、そのような機器を製造する製造装置、それらを用いるインフラが進化した結果でもあります。言い換えれば、科学技術そのものが指数的に進化しているのです。1865年にジュール・ヴェルヌが著した"月世界旅行"が実現するのには100年の年月が掛かりましたが、今、空想しているモノやコトは10年も掛からないで実現するかもしれません。実際、完全な自動運転車が2020年頃には公道を走るようになると言われています。もっと極端な例として、GoogleでAI(人工知能)の総指揮をとるレイ・カーツワイルは、2005年に、AIの発達がさらに進み、2045年にはAIの能力が人間を超えると予測しました。所謂"Singularity(技術的特異点)"が起こると言われています。もちろん、物理的、生物学的、社会的に考えてありえない、という批判はありますが、最近のAIの進展、チェスや囲碁の世界でAIが勝利している現実をみると、あながち空想とも思えません。今後、ICTの利活用はあらゆる分野で社会を変革していくdriving forceとなるでしょう。皆さんは、そのような予測を上回るスピードについていかなければなりません。

 では、技術が複合化、多様化し、スピードを求められる時代において、技術者には何が必要なのか。私の経験から、三つのことを心に留めておいていただきたいと思います。

 ひとつめは、専門性を十分に活かすプロフェッショナルとは、幅広い分野を多角的に見る目を持ち、また全体を俯瞰することができ、その視点から自分の領域を見据えて対応していくことができるということです。例えば、製造現場。ひとつの専門性が他の専門性と組み合わされることによって初めて製品が生み出されます。製造工程全体を俯瞰し、その視点から対応していくことが要求されます。また、専門性を掘り下げると同時に異なる分野の研究と融合して新たな学術・技術が生み出されている研究開発の現場においても、多角的に見るプロとしての視点が必要になります。現在、これまでになかった全く新しい製品やアイディア、イノベーションが期待されています。科学技術の進展が深まるとともに、多様な視点から新たな技術を創造していく能力。皆さんには、その能力が期待されているのです。

 多様性に対応する上で重要なことは、価値を見極める心の眼です。二つ目は、自ら判断するうえでの確かな価値基準を備えることです。その眼力を養うためは、政治・経済・社会、世界の動きを敏感に感じ取り、その背景を知って自らの世界観を築いていくことが大切です。また、本を読み、様々な人との交流を通して他者の価値観を知ることも重要です。その経験が教養を修め、哲学を形作っていくことだと思います。皆さんには、哲学の鎧をまとった工学研究者・技術者になって頂きたいと思います。

 予測が難しい時代には様々なリスクが潜んでいます。三つめは、課題を前にしたとき、敢えてリスクを取って立ち向かう「気概」を持つことです。一方で、壁が立ちはだかったときに、一旦立ち止まり、解決する糸口を見つけるため事態を見渡し、時には一歩退いて態勢を整える智慧を持つこと。智慧と気概をもって取り組む姿勢、それが真の「勇気」だと思います。

 つねに技術の研鑽に励み、こころを磨き、社会の動きを敏感に感じ、不断の勇気をもって課題に臨んでください。そうすれば、変化のスピードに流されることなく、多様な価値観をもった人々とともに新たな技術・製品を生み出していくことができるはずです。

 名古屋工業大学は、新たな階段を上る皆さんをこれからも応援していきます。そして、皆さんに続く優秀な人材を世に送り出すために、111年の伝統と誇りを守りながらもそれに甘んじることなく、変化する社会・産業界の期待に応え、世界に伍していける大学になるべく進化してまいります。

 皆さんの健闘、幸運を祈念しています。

 本日は、誠におめでとうございます。

平成29年3月23日

名古屋工業大学長 鵜飼裕之


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