名古屋工業大学パンフレット
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特 集 活動実績ダイバーシティ・ガバナンス財務情報基金・WEBページ情報氏原嘉洋 Yoshihiro UJIHARA14名古屋工業大学レポート 2022大学院工学研究科 工学専攻(電気・機械工学領域)准教授 力という物理的なものが生命体に及ぼす影響を知りたい! という気持ちが出発点です。生命の象徴であり、常に動き続ける臓器である心臓を研究しています。心臓は、高⾎圧などの力学負荷に対して肥大して適応しますが、その適応メカニズムが破綻すると心不全という状態に陥ります。昨年、力学負荷に対する心臓の変容過程を解析し、心筋細胞の特殊構造の崩壊を起点とする心不全発症機構の一端を解明したことで、文部科学大臣表彰 若手科学者賞をいただきました。自分一人では到 流体科学を専門にしています。流体を簡単に言えば、液体や気体、それらが混ざり合った流動性を持つもののこと。私は、流体が不規則に動く乱流の現象を理解したり、方程式に当てはめてシミュレーションしたりといったことをしています。実は流体科学は高校の物理では習いません。私は大学で出合って概念の新鮮さに惹かれました。応用例のひとつに気象学がある点も魅力に感じ、今に至ります。 昨年度いただいた文部科学大臣表彰 若手科学者賞は、乱流中で雲粒子がどのよう底たどり着けなかった成果ですので、周囲の皆様のおかげだと感謝しています。 研究者としての道のりは、決して順調ではありませんでした。中でも、医大に所属していたときには、期待された研究成果をなかなか出せない自分が歯がゆく、また、医学と工学の視点の違いに戸惑い、鬱々とする日々が続きました。あまりにも失敗ばかりでしたので、逆にあきらめとも開き直りともいえる心持ちになることができました。すると不思議なもので、途端にいろいろなことがうまくいくようになりました。に輸送され混合されるのか、実際に起こっている現象をスーパーコンピューターで解析したことが認められました。複雑な流れの中、無数に存在する粒子一つ一つの動きを直接見ながら、運動方程式に当てはめ計算して確かめた例は、過去にほとんどありませんでした。受賞をとても名誉に感じると同時に、皆様に助けていただいて出せた結果なので、感謝の念も尽きません。 気象学、天気予報の精度向上に貢献したいという大目標はありますが、まだ到達していないのが現状です。私たちの視点は、失敗続きだった実験も、なにかしらの積み重ねになっていたかもしれません。 恩師がかけてくれた「現在重要な研究をするのではなく、自分のやっている研究を重要にしなさい」という言葉が心の支えになっています。私の研究は、すぐに人の役に立つものではないかもしれません。遠い未来に誰かが出す大きな成果の根拠になれば、という思いで、目の前にある自分にできることを精いっぱい取り組み、確実に一歩一歩前進させることが大切だと思っています。非常に小さなものです。ミクロレベルでの研究を積み重ね、もう少し大きな視点、雲全体や雲のクラスター現象を研究されている方々に接続できればとの思いです。 個人的には、実際にシミュレートする中で起こる流体現象や小さな粒子の動きをつぶさに観察したり、背景にある物理現象に思いを巡らせたりするのがとても面白いのです。研究の世界は厳しい、続けるのは難しいと言われることもありますが、個々の物理現象を解明したい! その気持ちを原動力に、地道に続けたいと思っています。 機械工学分野心臓の力学的適応機構と心不全の発症機構に関する研究 応用物理分野大学院工学研究科 工学専攻(物理工学領域)助教雲乱流混合現象における雲粒子成長と乱流との相互作用の研究齋藤泉 Izumi SAITO

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