名古屋工業大学パンフレット
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13インスタントハウスの開口部の施工の様子Nagoya Institute of Technology Report ���� 私が研究・開発したインスタントハウスは、わずか数時間で建てることのできる簡易住宅です。気球のように膜素材を空気で膨らませて屋根と壁を作り、内側に空気含有量の高い断熱材を吹き付けるだけで建物ができあがるので、一般の住宅と比べて建築費も安く抑えることができます。風雨に強く、風速��mの台風でも本体はビクともしません。被災地や途上国など家がなく困っている方に安心して住まえる場所を提供することを目的に研究開発しました。 「安くてすぐに建てられる家」という構想を立ち上げた後の数年間は、いいアイデアが浮かんでも失敗続きでした。しかし、ある日カバンの中で小さく丸めてあったダウンジャケットが、カバンから取り出した瞬間に膨らんで元に戻るのを見て、建物全体に空気を多分に含ませる構造を思いつきました。空気を材料にすれば断熱効果も遮音効果も得られますし、費用もかかりません。 こんなに軽くてメリットのある構造をなぜ誰も思いつかなかったのでしょうか?そこで初めて、理想的な住まいに必要なのは従来の建築の逆の発想だと気づきました。部材が大きい、重い、多いなど、既存の建築物の特徴を思いつくかぎりノートに書き出し、その反対語を並べたものをインスタントハウスの基本方針としました。 従来の建物は構成している部材が重くて種類が多いので、たくさんの職人さんが必要です。私はまず、足場、基礎、壁、屋根を順に建てなくても済むように、円柱形の壁と円錐形の屋根を一体化して空気で膨らます構造にしました。空気を抜いて畳むことができれば、建設地までの運搬も容易です。 大量のペンシルバルーンや大きなスポンジなど様々な材料を使って試行錯誤を繰り返し、����年にようやく第�号が完成しました。特許出願後は、かたち、色、大きさを変えるなどバリエーションを増やしてバージョンアップを図りつつ、製造と販売を行う大学発ベンチャーを起業し、名工大での研究と相乗効果を為しながら、国内外に普及しています。北川 啓介 Keisuke KITAGAWA大学院工学研究科工学専攻(社会工学領域) 教授■ 研究分野:建築・デザイン分野■ 研究キーワード:建築意匠、建築設計、防災計画        ものづくり文化論、まちづくり従来になかった新たな建築構法により、安価かつ短期間で建てることができる簡易住宅『インスタントハウス』。アイデアが生まれたきっかけから開発、実用化の経緯を、発明者であり名工大発ベンチャーの株式会社LIFULL ArchiTechの代表取締役社長兼CEOでもある北川啓介教授が報告します。どこでも誰でも数時間で建てられて酷暑でも極寒でも快適な『インスタントハウス』特 集教員研究紹介地球上で家に困る人々が快適で丈夫な家をもつあたりまえを実現する

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