名古屋工業大学パンフレット
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1 私が研究している「電磁気学」は、目に見えない電波や電磁場などの現象を紐解く学問です。現在は、様々な電波の中から特定の電波を識別する新技術の開発に取り組んでいます。携帯電話やWi-Fi、Bluetoothなどの無線通信には電波の「周波数」を識別する技術が使われていますが、無線通信の普及に伴い、利用できる周波数帯の枯渇が世界的な問題になっています。これを解決する鍵は電波の「パルス幅」にあります。 私は本学に赴任する前に、カリフォルニア大学サンディエゴ校に博士研究員として滞在していました。そこで研究していたのが、電子機器の故障原因になる短パルス(ごく短時間に発生する強い電波)の識別です。不定期に発生する短パルスをパルス幅(電波信号が継続する時間の長さ)によって識別し、吸収する材料の開発を行っていたのですが、ここで身に付けたパルス幅の識別新たな次元﹁パルス幅﹂15231実験に使用した「波形選択メタサーフェス」Nagoya Institute of Technology Report ����技術が、本学赴任後の新たな研究テーマにつながりました。 特定のパルス幅を持った電波を識別した後、それを吸収するのではなく、反射することができれば、同じ周波数の電波をさらに細かく選別し、別の電波として利用することが可能になります。研究を重ねた結果、周期的な金属パターンに回路素子を実装することで、パルス幅の識別と反射を可能にする新材料の開発に成功しました。「波形選択メタサーフェス」と名付けたこの材料は周波数の枯渇問題を解決し、�GやIoTにおいて新テレビレーダー携帯A無線LAN携帯B周波数とパルス幅により、電波制御を�次元化たな産業を切り開く可能性を秘めています。 研究とは、決して自分一人の力で成し得るものではありません。人との出会いや経験から一つの道が拓き、他の研究者との交流やアドバイスからまた次の道が拓き、いくつもの幸運に恵まれてここまで歩んできました。本研究はJSTの創発的研究支援事業に採択され、通信、ネットワーク、半導体など他分野の研究者との研究会や交流会に参加する機会も生まれました。そこでまた多くの刺激を受けながら、本技術の実用化に向けてさらなる研究を進めていきます。周波数新アプリ重複可教員研究紹介同じ周波数の電波を選別する新材料で電波帯域枯渇問題の解決を目指す若土 弘樹 准教授田中 優子 Yuko TANAKA大学院工学研究科基礎類 准教授 ■ 研究分野:  認知科学、実験心理学、教育心理学■ 研究キーワード:  認知バイアス、誤情報、ヒューマン・コン  ピュータ・インタラクション、批判的思考特 集若手教員の研究、若手教員の研究、より暮らしやすい未来のためにできること。より暮らしやすい未来のためにできること。成田 麻未 Mami NARITA若土 弘樹 Hiroki WAKATSUCHI大学院工学研究科工学専攻大学院工学研究科工学専攻(電気・機械工学領域) 准教授(物理工学領域) 助教■ 研究分野:材料機能分野■ 研究分野:  電気電子分野、電磁波工学、通信工学■ 研究キーワード:  材料組織制御、アルミニウム合金、■ 研究キーワード:  マグネシウム合金、異種材接合  電磁波、メタサーフェス、無線通信

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