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脊髄への磁気刺激:活性化する神経の位置特定法を開発 ~神経に関わる難病の診断、治療の実現へ~

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カテゴリ:ニュース|2014年8月26日掲載


名古屋工業大学 情報工学専攻 ラークソ・イルッカ特任准教授、平田晃正准教授、日本赤十字社医療センター 松本英之医師、東京大学 寺尾安生講師、花島律子助教(現在 北里大学講師)、福島県立医科大学 宇川義一教授の共同研究グループは、電磁波シミュレーションと神経線維における電気信号伝搬シミュレーションの二つを統合する技術を開発、脊髄への磁気刺激法により活性化する神経の位置を特定することに成功しました。得られた成果は、英科学誌「Journal of Neural Engineering」(電子版)に掲載されました(10月号)。

人体外部から非侵襲(外科手術なしに)に神経を刺激する方法として、コイルに急激に電流を流した際に生じる磁場により、体内に誘導される電流を利用する方法があります(磁気刺激法)。脊髄への磁気刺激は、神経疾患の診断、尿/便失禁、パーキンソン病などの治療に適用されています。しかしながら、活性化される神経の場所を特定することは困難とされ、熟練医師の経験が必要となります。研究グループは、1辺1ミリメートルの微小立方体から構成され(総計約6400万点)、50以上の体内組織を考慮した電気的人体モデルを構築、①電磁波シミュレーションから得られた体内に誘導された電流を、②神経線維(直径10-20マイクロメートル)における活性化の有無および生じた電気信号の伝搬解析に受け渡し、二つの異なるスケールの生体物理現象を統合的に取り扱う技術を開発しました。複数の磁気刺激装置、電気刺激装置を用い、装置と人体の位置・方向などを変化させた場合の「神経活性化に必要な装置に入力する電流強度」、「刺激装置に電流を与えられてから反応が起こるまでの時間」のシミュレーション結果と測定結果(於日本赤十字社医療センター、東京大学)は合致、これまで困難とされていた活性化される神経の位置を特定することに成功しました。これまでの研究では、上記①の電磁波シミュレーションによる刺激装置開発などの例はあるものの、①と②を連結した物理的検討はありませんでした。なお、ワークステーションを用いてこの解析を実施するのに要する時間は、高々10秒程度であり、広範な利用が期待されます。

開発したシミュレーション技術を用い、患者ごとの最適刺激(オーダーメイド化)の決定が期待できます。また、標的神経のみを刺激することが可能となるため、磁気刺激に対する神経生理の一層の理解、さらには新規診断/治療法(診断:筋萎縮性側索硬化症(ALS)・ギラン・バレー症候群・慢性炎症性脱髄性多発神経炎などの神経難病、頸椎症・腰椎症・脊髄腫瘍などの脊椎脊髄疾患、治療:線維筋痛症・慢性腰痛・慢性頭痛などの難治性疼痛)の開発に繋がることが期待されます。


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