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学長のことば 2024年度大学院入学式式辞(2024年4月)

in.jpg 新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます。
 名古屋工業大学へようこそ。今日この日に、みなさんを名古屋工業大学にお迎えすることができたことは、教職員、在学生、卒業生そして本学に関わるすべての人々にとって大きな喜びであります。
 また、ご列席のご家族、ご親族のみなさまにも心からのお喜びを申し上げます。
 本学の創立は1905年に中部地方で初めての官立学校として設立された前身の「名古屋高等工業学校」にまでさかのぼります。まもなく創立120周年を迎えますが、これまでにのべ約8万人の有意の人材を世に送り出し、この中京地域はいうに及ばず我が国の産業および社会の発展に貢献をしてまいりました。今も本学の卒業生は国内外で広く活躍しています。そして現在ではわが国でも有数の規模を誇る国立の工科系大学となっています。
 今年度からはドイツのエアランゲンニュルンベルク大学と本学で二つ目の共同学位プログラムである、国際連携エネルギー変換システム専攻が後期課程にあらたに加わりました。また、前期課程では専門分野の垣根を超えた融合プログラムである「未来通信」、「カーボンニュートラル」、「医学工学」も発足いたしました。名古屋工業大学は時代とともに発展を続けています。
 さて、わたしたちの名古屋工業大学では「心で工学」を合言葉に掲げています。
 みなさんは工学を深く学ぶことを考えて本学に入学あるいは進学されたものと思います。工学はものづくりと深いかかわりをもっています。しかし、工学の作るものあるいは関わるものの向こうには必ず人がいます。
 わたしたちが「心で工学」をいうのはまさにこのためです。工学は究極的には人を相手にする学問であり人を理解してこそできる学問です。したがって工学を考えるときには、論理、計算をつかさどる左側の脳だけでは対応できるものではありません。感性や情感をつかさどる右側の脳も使うことが大切です。そこで、本学ではみなさんが左側の脳に劣らず右側の脳も鍛えることができるように、環境をすこしずつ整え続けています。
 何年か前から進めております、キャンパス内に様々なアート作品を設置するアートフルキャンパス構想もこの考えにそったものです。古来、いろいろな人が言葉を変えて繰り返し「芸術作品は自分の魂を映す鏡である」という趣旨のことを述べています。
 みなさんにはキャンパスの中のアート作品を見てあるいは感じて、みなさんが自分自身を見直す時間をもっていただけたらと思います。そしてそのような機会をもつことは小さいことかも知れませんがとても貴重で大切なことです。
 これからわかいみなさんは希望に満ちてやりたいことに熱中されることと思います。学部よりもさらに進んだ専門的知識や技術を身に付けるほかにも、外国にいって学ぶ機会を得てみたい、あるいは自分の発想を世に問うために起業をしてみたい、などいろいろあるのではないでしょうか。わたくしどもの大学ではそれらを応援する様々なしくみや仕掛けを用意していますので、それらを最大限に利用していただきたいと思います。
 ここでもうひとつお伝えしようと思います。次のような言葉があります。

 「自ら自己を高めるべきである、自己を沈めてはならぬ。
  実に自己こそ自己の友であり、自己こそ自己の敵である。」*

 これは2千年ほど前の言葉です。
 どのような環境にあったとしても自分を高めるのはつまるところ、他でもない自分自身であるということです。そして自分自身を信じて行動しなければ何も得られないし、何も起こらないということです。自分が育ち慣れ親しんだ環境にいることは心地よいことかも知れません。また、内なる自己はあなたにそうささやくかも知れません。ただあえてそこから踏み出して積極的により広い世界に出ていく気概を持ってほしいと思います。
 必ずしも楽しいことばかりではないでしょう。でもそれこそが自己を成長させることなのです。多様性というのは何も集団の特性にかぎるものではありません。自己の中の内なる多様性もまた存在します。自分とは異なるものに接し、感じ、その内なる多様性を積極的にはぐくむことは、どういうレベルであれ新しいものを生み出すことに必要不可欠なことです。
 それは若いみなさんだからこそ、ぜひやってもらいたいことであるし、人というものを理解し、「心で工学」につながることなのです。
 みなさんがこの名古屋工業大学で意義のある学生生活を過ごされることを祈念いたしまして、式辞といたします。

 本日はまことにおめでとうございます。

 

*バガヴァッド・ギーター (第6章5節) 
上村勝彦 訳  岩波文庫

2024年4月6日       
名古屋工業大学長 小畑 誠


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