名工大研究Stories Vol.42024年2月2日

電波の新しい見分け方を実現する電磁材料・メタサーフェスの研究

若土 弘樹Hiroki WAKATSUCHI

若土 弘樹

Hiroki WAKATSUCHI

大学院工学研究科 工学専攻
(電気・機械工学領域)
准教授

研究パフォーマンスを更新し続ける

研究分野
電気電子分野、ものづくり技術(機械・電気電子・化学工学)、通信工学
研究キーワード
電波、電磁波、通信、電気回路、電子回路

Qどのような研究をされていますか

私の研究は電波に関連する内容となります。とくに、みなさんのスマホやBluetooth機器などで電波を送ったり、受け取ったりすることがうまくいくように、電波環境を整える、電磁材料「メタサーフェス」を研究しています。実は一口に電波と言っても、いろいろな種類があります。一般的には、1秒間に振動する回数を表す「周波数」によって電波を見分けることで、通信機器同士の干渉や誤作動を避けることができます。私の研究室では、さらに同じ周波数でも電波の長さを表す「パルス幅」に応じて電波を見分ける電磁材料を開発しています。従来の周波数に加えてパルス幅を用い、同じネットワークの中でも見分けることのできる電波の数を飛躍的に増やすことを目指しています。

生命の力学的適応・進化のメカニズムの解明に向けた心臓の階層的理解 

メタサーフェス。金属が周期的に並び、回路素子を接続することで、
同じ周波数でも新しい自由度「パルス幅」に基づいて電波を見分けることができる。

Q研究の道を志したきっかけは

研究に興味を持ち始めたのは高校時代となります。当時は携帯電話の普及がさらに広がりを見せ始めた時期でもあり、電波の生体影響について学べる大学への進学を志しました。大学では目当ての研究室に配属されたのですが、ちょうど電波の生体影響に関するプロジェクトが終了していました。しかし、当時の指導教官から国の研究機関である情報通信研究機構で電波の生体影響について研究する機会を頂きました。そこでは様々な学生・研究員に出会い、刺激を受けることで、改めて研究のおもしろさにのめりこんでいきました。

測定試料を製作している若土准教授

測定試料を製作している若土准教授

Q本学赴任前にカリフォルニア大学サンディエゴ校に博士研究員として滞在されていましたが、思い出に残っているエピソードを教えてください

現在の研究の基礎はカリフォルニア大学サンディエゴ校で学びました。2年間ほど働きましたが、多くのことを学ぶことができるだけでなく、非常にハイレベルな研究環境でした。ここでは博士研究員の身分ではありましたが、大学内の授業をいくつか聴講することができました。どの先生もその道では著名な方ばかりでした。アメリカの授業ではたくさんの質問が出るのですが、先生方は質問の意図だけでなく学生の理解度を的確にとらえて返答されており、そのレベルの高さに圧倒されました。これは自分自身にとって、その後の良い目標ともなりました。

Q研究の面白さ、苦労した点、研究者として心がけていることを教えてください

研究はすんなり進まない方が面白いと思っています。その過程では苦労や大変なこともあるかもしれませんが、同時に様々な発見があり、発見は自分の中で喜びや楽しみになっています。あまり良くない面もあるかもしれませんが、研究では本当に自分自身が興味を持ち、おもしろいと思える内容に取り組むようにしています。また、最近は研究分野によらず、様々な研究者とオープンに関わるようにしています。ここ数年はJSTのさきがけや創発的研究支援事業などを通して、素晴らしい研究者の方々に出会い、新たな共同研究へと発展させ、改めて自分の外の世界を知る大切さを学びました。

客員教授とそのご家族とともにラボのメンバーでお別れ会を実施した様子

客員教授とそのご家族とともにラボのメンバーでお別れ会を実施した様子

測定データについて研究室学生とディスカッション

測定データについて研究室学生とディスカッション

電磁界シミュレータを使って学生とデータ分析中

電磁界シミュレータを使って学生とデータ分析中

Q今後の目標(研究・人生)をお聞かせください

これは私にとって今までも同じなのですが、より良い研究をして、より良い論文を書くことが目標です。つまり、自分の中での研究パフォーマンスを更新し続けることが目標です。研究者の世界では論文誌によってインパクトファクターと呼ばれる指標や権威のある雑誌などありますが、これらによらず、自分自身が納得できる、より良い研究成果を世の中に発表することを目指していくつもりです。

略歴

2011年7月に英国ノッティンガム大学電気電子工学専攻博士課程修了。博士(電気電子工学)。
その後、米国カリフォルニア大学サンディエゴ校Postdoctoral Researcher、2013年10月より名古屋工業大学特任助教を経て、2016年7月より同大学院工学研究科准教授。その他、2019年10月から2022年3月までJSTさきがけ研究員を兼任、2023年4月からはJST創発的研究支援事業に参画。

趣味

研究、ジョギング、家族と過ごす時間