名工大研究Stories Vol.62024年12月13日
人間とAIが共創する社会を目指して
- 個人の希望と社会全体の目的が調和する仕組み作り -

櫻井 祐子
SAKURAI Yuko
情報工学類
教授
人工知能に負けない高い独自性を持つ研究を目指す
- 研究分野
- 知能情報分野、情報通信、知能情報学
- 研究キーワード
- 人工知能、マルチエージェントシステム、マーケットデザイン
Qどのような研究をされていますか
私は、主に、人工知能の一分野であるマルチエージェントシステムの研究をしています。エージェントとは、人工知能や人間のように自律的に行動をする主体を意味します。マルチエージェントシステムは 「三人寄れば文殊の知恵」を計算機上で実現するための研究分野です。複数のエージェントが協調したり、協力するために必要なメカニズムの設計を目的の一つとしています。例えば、企業や学校における人員配置の方法や守りたい資源(例えば空港や学校)を攻撃から守る方法の提案を行っています。また、機械学習においてデータや計算資源を提供した人や組織の公平な評価方法を行っています。

Q研究の道を志したきっかけは
私が研究の道を志したきっかけは単純なもので、大学院博士前期課程を修了後に入社した企業での配属先が人工知能やマルチエージェントシステムの研究を行っていたからです。その後、ネットワーク開発業務に携わりましたが、自らの力で課題を発見し、解決手法を提案するという研究が自分には向いていると思い、研究の世界に戻りました。
Q学生が自身の研究テーマを見つける際のコツなどがあれば教えてください
学生が自身の研究テーマを見つける際に、私が学生によく伝えるのは、まずは自分の生活の中で困っていることを見つけることが大切であるということです。それが自らの原体験となり、研究のオリジナリティにもつながるためです。身近な出来事から解決したい問題を見つけることで、解決策として検討する人工知能やマルチエージェントシステムの技術を習得する動機にもなります。
私は名工大に着任して3年目ですが、幸運なことに、学生が国際会議でBest student awardを受賞したり、マルチエージェントシステム関連の国際競技会で第2位になったりと成果を出してくれており、とても嬉しく思っています。国際会議の論文執筆や発表準備など、学生にとって大変なことだと思いますが、海外の研究者たちと議論している様子を見ると、その成長に驚きと感動を覚えます。そのため、学生に国際会議発表を目指した研究をしようとエンカレッジしています。

Q研究の面白さ、苦労した点、研究者として心がけていることを教えてください
私は大学院博士前期課程まで数学を専攻していたため、研究を始めた当初、情報工学に関する知識やプログラミングスキルが全くありませんでした。上司の人が何を言っているのか、全く分からない日々が続き、辛いかったことが今でも思い出されます。でも、最初の研究成果が出て、国際会議で発表するという経験をした頃から、研究の面白さに気づき始めました。研究者としては、真摯に問題に取り組むという気持ちが重要であると考えています。
Q今後の目標(研究・人生)をお聞かせください
人工知能の研究開発は急速に進展しています。そのスピードに負けないように、高い独自性を持つ研究をしていきたいと思います。人々が人工知能とどのように向き合っていくかという問題を解決することも重要と思います。人工知能に関する新しい技術を開発するだけでなく、その技術が人々にどのような影響を与えるのかということも考えながら、研究をしていきたいと思います。また、情報工学に興味のある生徒の皆さんに、情報工学の面白さを伝えられるような活動にも取り組んでいきたいと考えています。プライベートでは、子育てが一段落して時間ができたので、高校まで習っていたピアノを再開しました。たくさんの曲が弾けるようになりたいと思っています。

略歴
1997年3月に名古屋大学大学院多元数理科学研究科博士前期課程修了。1997年4月よりNTT、同年8月よりNTTコミュニケーション科学基礎研究所。2006年3月に九州大学システム情報科学府博士後期課程修了。博士(工学)。ヤフー株式会社 Yahoo!JAPAN研究所などを経て、2011年3月より九州大学大学院システム情報科学研究院 准教授、2017年4月より国立研究開発法人産業技術総合研究所 人工知能研究センター 主任研究員。2022年4月より名古屋工業大学 情報工学類 教授。
趣味
街歩き(名古屋市の史跡散策コース巡りなど)。旅行。