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大学院工学研究科未来材料創成工学専攻およびオプトバイオテクノロジー研究センターに所属する井上圭一助教が、光科学技術研究振興財団「研究表彰」を受賞しました

カテゴリ:ニュース|2014年02月14日掲載


大学院工学研究科未来材料創成工学専攻およびオプトバイオテクノロジー研究センターに所属する井上圭一助教が、光科学技術研究振興財団研究表彰を受賞し、2月13日(木)に授賞式が行われました。
研究テーマ:「光駆動型ナトリウムポンプの発見」
研究内容
海洋を初めとするあらゆる場所に生息する細菌類(真正細菌・古細菌)などの微生物の多くは、その細胞を取り囲む細胞膜の中に微生物型ロドプシンと呼ばれるタンパク質を持っています。この微生物型ロドプシンは太陽の光を吸収するとそのエネルギーを使って、様々な機能を発現します。その中でも特に数が多く、重要とされるのが水素イオンを細胞の内側から外側に輸送するロドプシンで、細菌は輸送によって生じた細胞の中と外での水素イオンの濃度差を利用して、細胞の生きるエネルギー源となるアデノシン三リン酸(ATP)を合成します。その一方で海洋中に多く存在し、水素イオンと同じ正イオンであるナトリウムイオンを輸送するロドプシンが発見されないのは長年大きな謎とされてきました。
今回井上助教は本学の神取秀樹教授、東京大学・大気海洋研究所の木暮一啓教授、吉澤晋博士と共に東京湾で発見された細菌のゲノムの中から、新たなロドプシンを発見し、それが光を使ってナトリウムイオンを輸送するものであることを初めて明らかにしました。またこの分子はナトリウムイオンだけでなく、周辺の溶媒を変えることでリチウムイオンや水素イオンを輸送することができ、これまでのロドプシンには見られなかった環境に応じて機能を変化させる性質も持っていることもわかりました。この成果は昨年科学総合誌として著名なNature Communications誌に掲載され、その発見の重要さが評価された結果、本受賞へと結びつきました。
井上圭一さんのことば:
今回発見された光駆動ナトリウムポンプ型ロドプシンは、海洋における微生物の光利用を考える上で非常に重要な存在であると考えています。今後はなぜこの分子がナトリウムイオンを輸送できるのか、そのメカニズムの解明と、この分子によるナトリウムの輸送がどのように重要なのか、その生物学的役割の解明が研究の対象になると期待されます。また光を使って様々なイオンを輸送するというこの分子は、生体をベースとした新規材料開発への応用への大きな可能性も持っています。ちょうど昨年本学に、私も所属するオプトバイオテクノロジー研究センターが設立され、生物の光操作技術創出に向けた研究開発が本格化しており、そこでも今後この光駆動型ナトリウムポンプは重要な役割を果たすものと期待しています。
今回の研究が歴史ある光科学技術研究振興財団の研究表彰に選んでいただけたことは大変光栄であると共に、今後の研究への大きな励みとなります。また今回の研究は共同研究者である神取教授、大気海洋研の木暮教授、吉澤博士を始め、研究室のメンバーの大きな協力のもとに達成することができました。それらの方々にこの場を借りて御礼申し上げると共に、今後更なる光生物学への貢献を目指していきたいと考えています。
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今回の研究の中で発見されたナトリウムポンプ型ロドプシン
(外液中のイオンに応じて運ぶイオンが変わる)

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受賞した井上助教

光科学技術研究振興財団「研究表彰」とは :
光科学技術研究振興財団は、光科学技術に関する基礎的な調査・研究、研究への助成及び表彰等を行うことにより、光科学技術の高度化と新しい科学の創造に貢献するとともに、光科学技術の振興を図り、科学技術と産業経済の発展に寄与することを目的として1988年に設立されました。研究表彰は毎年光科学に関する基礎的な研究または光科学技術の向上に役立つ研究の中でも、独創的な研究を行った35歳以下の研究者2~3名を対象にした賞です。



 


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