趙 正宇
CHO Seiu
フッ素の力で拓く持続可能な有機分子設計
「フッ素」と「有機化学」を核に、医薬・農薬をはじめ、触媒、環境調和型材料、さらには分解技術の開発まで、多様な応用展開を見据えた有機分子設計の研究を進めています。フッ素は分子の性質を精密に制御できる特異な元素であり、その力を最大限に引き出すため、新しいフッ素化試薬の創製や、触媒反応の高度化に挑戦しています。近年は、冷媒として用いられてきた化合物を新たなフッ素化試薬へと転用する技術、温和な条件で進行する選択的反応の開発など、多くの成果を挙げています。加えて、環境中での難分解性や生体蓄積性が問題視されているテフロンをはじめとするPFAS(有機フッ素化合物)の分解・無害化に関する研究にも注力しています。従来は極めて安定とされてきた炭素−フッ素結合を選択的に活性化・切断する新しい反応系の開発を通じて、環境負荷の低減と資源循環の実現を目指しています。これにより、フッ素化学の高度な分子設計技術を「創る化学」から「分解する化学」へと拡張し、持続可能な社会に資する新たな価値創出を目指しています。

メッセージ
私の研究は、「フッ素」という特別な元素の力を活かし、医薬品や農薬、材料など人々の暮らしを支える分子を設計すると同時に、環境問題の解決にも貢献することを目指しています。フッ素は、分子の性質を精密に調整できるため、薬の効き目を高めたり、長持ちする材料を生み出したりする上で重要な役割を果たします。一方で、その強い結合ゆえに自然界で分解されにくく、環境中に蓄積するという課題もあります。そこで私は、新しいフッ素化技術によって有用な物質を生み出すとともに、これまで壊せないとされてきた物質を分解する技術の開発にも取り組んでいます。「つくる化学」と「分解する化学」の両立を通じて、環境負荷の低減と資源の有効活用を実現し、持続可能な社会の未来を切り拓きたいと考えています。
