氏原 嘉洋
UJIHARA Yoshihiro
力学で読み解く生命の適応と進化のしくみ
心臓は生命の象徴であり、一生休まず血液を送り出す高機能ポンプです。血圧や拍動が生む圧力・伸び・血流といった「力」の環境に合わせて構造と働きを調整し、恒常性を保ちます。この適応を力学的な調節ルールとして捉え、どの力がどのような構造変化・機能変化を引き起こすのか、そしてどこに限界(境界)があるのかを解明します。さらに、適応が破綻して心不全(血液を十分に送れない状態)へ至る過程を力学の言葉で説明することを目指します。心臓を“生命と力”の関係を解き明かすモデルとし、独自の力学試験装置と体内環境を模擬した実験により、力を測って見える化し、力が情報へ、遺伝子制御・組織再構築を介して形と機能へ変換される仕組みに迫ります。両生類・鳥類・哺乳類など多様な動物比較から進化の痕跡を読み解き、臓器や種を超えた共通原理と制約を導きます。これらの知見を心不全の早期検知や治療、医療技術の創出につなげます。

電気・機械工学類|教授
氏原 嘉洋(ウジハラ ヨシヒロ)
UJIHARA Yoshihiro
キーワード
担当分野・プログラム
研究区分
研究テーマ
- 心臓リモデリングの力学適応機構の解明
- 心臓発達過程の力学制御メカニズムの解明
- 比較バイオメカニクスによる心臓進化の方向性・制約の解明
- 生体力学環境の計測・模擬・解析基盤技術の開発
- 心不全の力学的境界条件の同定と評価指標の提案
メッセージ
機械工学で心臓のような生命を研究することに意外性を感じるかもしれません。しかし生命は、無重力で筋肉が衰えるように、常に「力」との関係の中で成り立っています。私は脊椎動物の心臓を比較し、進化の過程を手がかりに、「どのような環境で、どのような構造や働きが選ばれてきたのか」を読み解こうとしています。こうした視点で見ると、飛翔を支える鳥の強靭な心臓や、低温・低負荷でも機能する冬眠中の心臓には、私たちを超える適応のヒントが見えてきます。力学の視点から生命を捉え直すことで、新たな理解の枠組みと定量的な視点を提示し、病気の理解や医療技術の発想につなげていきたいと考えています。
