鈴木 政尋 准教授 が 日本数学会 函数方程式論分科会 福原賞 を受賞しました
2025年1月15日掲載
第十六回(2024年度) 日本数学会 函数方程式論分科会 福原賞

福原賞は、函数方程式論分科会において主な研究活動を行っている研究者の中で、函数方程式論分科会での特別講演あるいは研究集会「微分方程式の総合的研究」で招待講演をした方々の中で、優れた業績を上げた方を中心に顕彰を行うものです。
鈴木政尋氏は、Euler-Poisson方程式などに代表される、有限伝播性を伴う双曲型偏微分方程式と長距離間の相互作用を記述する楕円型偏微分方程式が連立する非線形偏微分方程式系の数学解析において顕著な業績を挙げています。特に、プラズマが接触する固定壁付近で生じる境界層(シース)の解析において、鈴木氏は、西畑伸也氏、大縄将史氏、高山正宏氏、C.-Y. Jung氏、B. Kwon氏、K. Z. Zhang氏等と多岐にわたる研究を行い、第一人者としてその数学理論の礎を築いてきました。プラズマ物理学では、流体力学的モデルである Euler-Poisson方程式(以下、EP方程式)や、気体分子運動論的モデルである Vlasov-Poisson方程式(以下、VP方程式)から、シースを表す定常解が形成されるための条件(Bohm条件)が形式的に知られていました。鈴木氏は、Bohm条件の数学的な検証を行い、Bohm条件下における半空間EP方程式の定常解の存在と初期摂動に対する漸近安定性について厳密な証明を与えました。さらに、曲がった境界を持つ空間においてEP方程式の定常解が存在するための必要十分条件を与え、平坦とは限らない固定壁におけるBohm条件を確立しました。
これにより、Bohm条件の境界形状に対する依存性が初めて明らかになりました。境界が平坦でない場合は、従来用いられていたODEの手法が適用できないため、時間大域解の構成とその安定性解析に基づくアプローチが新たに展開されていることは特筆すべきです。また、VP方程式に基づくシースの数学的な研究は未開拓の分野でしたが、鈴木氏は、1次元半空間VP方程式の定常解が存在するための必要十分条件を与え、さらに、EP方程式とVP方程式の定常解の関係を明らかにしました。これは、VP方程式を用いたシースの数学理論として極めて先駆的なものでした。
これらの鈴木氏の業績は非常に優れていたことから、函数方程式論分科会福原賞にふさわしいものとして受賞に至りました。