白井研究室の共同研究成果がJournal of American Chemical Society 誌の「Cover」に選ばれました
Research
研究・産学官連携
2026年10月16日掲載
白井研究室と中国・内モンゴル大学 Prof. Dr. SHEN Hui 研究室らとの共同研究成果「Crystallographic Visualization of the Missing Structural Evolution of Copper Nanoclusters」が高く評価され、アメリカ化学会が刊行する学術誌『Journal of the American Chemical Society(JACS)』のCover(表紙)に選ばれました。
金属ナノクラスターは、数個から数十個程度の金属原子から構成される極微小な物質であり、その原子配列や構造によって光学特性や触媒特性などが大きく変化します。中でも銅ナノクラスターは、銅の豊富な資源量や多様な電子状態に加え、触媒、光学、バイオ分野への応用が期待されています。一方、金や銀のナノクラスターでは成長に伴う構造変化の理解が進んでいるのに対し、銅ナノクラスターは不安定で、反応途中の構造を単離・結晶化することが難しいため、「小さなクラスターがどのように成長してより大きな構造になるのか」を原子レベルで明らかにすることは困難でした。本研究では、ジスルフィドを用いて保護配位子の生成を緩やかに制御する独自の合成手法を用い、反応温度と反応時間を精密に調整することで、Cu12、Cu23-a、Cu23-b、Cu25-a、Cu25-b、Cu61という6種類の銅ナノクラスターを同一の合成系から作り分けることに成功しました。さらに、単結晶X線構造解析によってそれぞれの原子配列を決定し、銅ナノクラスターが小さな構造から大きな構造へと成長していく過程を原子レベルで可視化しました。 その結果、銅と硫黄からなるCu3S3六員環およびCu4S4八員環が基本的な「構造ユニット(building motifs)」として働き、中心部の銅原子からなるコアの成長に応じて組み替わりながら、ナノクラスター全体の構造進化を制御していることを明らかにしました。また、同じ数の銅原子から構成されながら異なる原子配列を持つCu23およびCu25の構造異性体も確認され、表面配位構造が柔軟に変化することで内部の構造ひずみを調整していることが示されました。本成果は、これまで十分に解明されていなかった銅ナノクラスターの構造進化を、サイズの異なる一連のクラスターを通して実験的に明らかにしたものです。得られた原子レベルでの構造形成に関する知見は、目的とする構造や機能を持つ銅ナノクラスターを合理的に設計・合成するための重要な指針となります。今後、電子構造や表面反応場を精密に制御した新しい触媒材料や光機能材料などへの展開が期待されます。論文でも、サイズに伴う金属コアの構造変化やCu3S3/Cu4S4表面ユニットが、触媒設計や選択性制御につながる可能性が示されています。
発表雑誌
<掲載論文> Crystallographic Visualization of the Missing Structural Evolution of Copper Nanoclusters
<掲載内容> Front Cover
<発表雑誌> Journal American Chemical Society (2026) 148 (39): 42256-42264, DOI: https://doi.org/10.1021/jacs.6c12181
関連リンク
【10月19日】ラジオZIP-FM「SUPER CAST」に牧野友紀准教授が出演予定
この情報は研究支援課が提供しています。
