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清水勤二初代学長が開発に貢献した国産初の機械式整流器「ベルトーロ整流器」

ベルトーロ整流器とは

ベルトーロ整流器は椎尾詷(しいお ひとし)によって大正時代に発明された回転機械式整流器である。三相交流電圧を入力し、多相変圧器と同期電動機を組み合わせて、低圧・大電流の直流に電力変換する直流電源装置である。直流出力の電流は最大10,000A、電圧は最大1,110V、出力電力は最大250kWのものが製品として製作された。その特性からめっき用電源をはじめ、アルマイト用、映写用、バッテリ充電用途等の直流電源装置として幅広く利用された。

図1は本学6号館エントランスに展示しているベルトーロで、カバーを外して各部の構造をわかり易くしている。展示のベルトーロは、200V、60Hzの三相交流を入力し、直流出力10V、600A、6kWを出力する。展示品は、1952年(昭和27年)製造で株式会社中央製作所からの寄贈品である。

ベルトーロは、電力変換器を意味する「コンバータ」、「インバータ」に共通する「バータ」をエスペラント語読みにして、椎尾によりベルトーロ(VERTORO)と名づけられた。

図1 展示ベルトーロ

図1 展示ベルトーロ

展示場所:6号館エントランス

電気学会「でんきの礎」を受賞

ベルトーロ整流器を用いた直流電源装置が第二次世界大戦後の日本産業の発展に貢献したとして、2023年3月16日に名古屋工業大学は、第16回電気学会「でんきの礎(いしずえ)」を受賞した。「でんきの礎」は、社会の発展に貢献し歴史的に記念される電気に関する人、モノ、こと、場所の顕彰である。顕彰名称「椎尾詷の発明によるベルト―ロ整流器」、人とモノの顕彰として、名古屋工業大学は株式会社中央製作所と名古屋大学とともに顕彰先として選定された。図2は「でんきの礎」受賞の記念品として授与された(a)プレートと(b)クリスタルトロフィーで、ベルトーロ整流器とともに展示をしている。

(a) プレート

(a) プレート

(b) クリスタルトロフィー

(b) クリスタルトロフィー

図2 「でんきの礎」受賞の記念品

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ベルトーロの歴史と名古屋工業大学の貢献

椎尾は東京帝国大学理学部数学科在学中の1918年(大正7年)7月に図3に示すベルトーロの特許「同期電機」を出願している。1920年東京帝国大学卒業とともに、第八高等学校(現 名古屋大学)数学科講師となり、翌年には教授に昇任している。

椎尾は自力で町工場の片隅でベルトーロの模型を製作し、実験を試みるが、電圧を加えて回り出したと思ったら、煙が出るなどの悪戦苦闘をしていた。

そんな折、椎尾の旧知の名古屋高等工業学校(現 名古屋工業大学)電気科教授の清水勤二(後の初代名古屋工業大学長)の協力を得て、電気科助手の黒田定義とともに、名古屋高等工業学校の実験室で、1929年(昭和4年)9月30日に初号機を完成させた。図4に椎尾と黒田の肖像を示している。1934年春期に、椎尾と黒田は、事業化の支援を日本車輌製造社長の後藤幸三に依頼し、同年11月17日に所主を黒田として瑞穂製作所を設立した。さらなる事業展開のために、瑞穂製作所を発展的解消し、1936年(昭和9年)4月27日に中央製作所を設立し、社長に後藤、取締役に黒田がそれぞれ就任した。その後、主に低圧・大電流直流電源用途に適したベルトーロは、1968年(昭和43年)までに7,545台製造販売され、戦後日本の産業の発展に貢献した。

図2 ベルトーロ特許明細書

図3 ベルトーロ特許明細書

(a) 発明者 椎尾詷

(a) 発明者 椎尾詷

(b) 開発者 黒田定義(名古屋高等工業学校 助手)
図3 発明・開発者

(b) 開発者 黒田定義(名古屋高等工業学校 助手)

図4 発明・開発者

ベルトーロ整流器のしくみ

ベルトーロは、三相交流電圧を直流電圧へ電力変換する整流回路である。図5のベルトーロ原理図に示すように、三相交流を12相交流に変換する多相変圧器、多相変圧器の出力端子の12個の整流子、12相交流を整流して直流を得るための刷子(ブラシ)、刷子を回転させるための同期電動機で構成されている。図6は、各構成部のしくみを示している。図6(a)は12相交流電圧を発生する変圧器の二次コイルで、巻線の片側はすべて中性線に接続され、もう片方は整流子1~12の端子に接続されている。図6(b)は中性線から見た12相交流電圧の電圧ベクトル図である。図6(c)は中性線から見た12相交流電圧波形で、位相角30度ずつ異なる12個の正弦波電圧を発生する。中性線を直流出力の+端子とし、12相交流電圧波形のうち最も低い電圧を-端子とすれば、直流電圧が得られる。図6(d)は直流電圧を得る整流の原理を示している。時刻 t=0 において、最低電圧の整流子4に回転刷子が接続され、刷子がつながっている-端子に最低電圧が出力される。同期電動機により回転する回転刷子は、円周上に配置された整流子1~12を移動し、常時、最低電圧が回転刷子に接続され、+と-端子間に直流電圧が出力される。

図4 ベルトーロ原理図

図5 ベルトーロ原理図

図5 各構成部のしくみ

図6 各構成部のしくみ

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