柴田 哲男 教授が、第18回GSC賞(グリーン・サステイナブル ケミストリー賞)文部科学大臣賞を受賞しました。
2019年5月31日掲載
- 受賞者
- 柴田 哲男 教授
- 受賞の対象
- 環境破壊物質フロン23を付加価値の高いトリフルオロメチル含有化合物に変換する手法の開発
- 受賞者の関連サイト
- 柴田研究室
- 関連するウェブサイト
- 公益社団法人新化学技術推進協会
グリーン・サステイナブル ケミストリー(GSC)とは「人と環境にやさしく,持続可能な社会の発展を支える化学」のことをいい,同賞はGSCの推進に貢献する優れた業績を挙げた個人、団体を表彰するものです。中でもGSC文部科学大臣賞は,学術の発展・普及に貢献した業績に対する賞です。
柴田教授は,冷媒やテフロン樹脂を製造する際に副生する産業廃棄物のフロン23(フルオロホルム,HCF3)を,医薬品や電子材料の原料となるトリフルオロメチル化合物に変換する革新的な合成手法の開発に成功しました。フロン23は,3つのフッ素原子を持つメタンで,フロンガスの一種です。しかしオゾン破壊係数が0であり,毒性もないことから産業への利用が望まれています。とりわけ,医薬品や農薬,電子材料の原料に欠かせないフッ素を含んだ有機物質であることから,フロン23の利用法が確立出来れば,産業界に大きな利益をもたらすと期待されます。しかしながら,その利用は一筋縄ではいかず困難な状況が続いており,大気中に排出するしかありませんでした。ただし,地球温暖化係数が二酸化炭素の1万倍以上であるために,排出が厳しく制限されるようになり,現在では産業廃棄物としてプラズマ処理や加熱処理で分解する以外に術はない状況です。
フロン23から有用なフッ素化合物を合成するには,フロン23から発生させる不安定な「トリフルオロメチルアニオン」を扱う方法の開発が不可欠でした。柴田教授らは,この難題に数年前から取り組んでおり,最近,安価なグライム溶剤と塩基を組み合わせることで,トリフルオロメチルアニオンを安定化させる手法を見出し,フロン23を用いてトリフルオロメチル化合物を作り出す革新的な変換反応を報告しました。この技術が高く評価され,本賞を受賞されるに至りました。