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柴田研究室の新しい分子変換技術が,Asian Journal of Organic Chemistry誌にて「VIP (Very Important Paper)」として選出され,2019年Volume 8, Issue 4の表紙(Cover Picture)を飾りました。

Research

研究・産学官連携

2019年5月16日掲載


 研究論文「Catalytic Desymmetrization of 1,3‐Difluoropropan-2-ols via C−F Bond Activation using a Phosphazene Base Affords Monofluoromethyl-substituted Epoxides」が高く評価され,Asian Journal of Organic Chemistry誌のVIP (Very Important Paper)に選出されました (図1)。

 また,本研究成果は,2019年Volume 8, Issue 4の表紙「Cover Picture」を飾りました(図2)。

 市場医農薬品のおよそ3割がフッ素化合物であり,フッ素を医農薬品候補化合物に導入することで,医農薬品開発の成功確率が上がると期待されます。そのため炭素にフッ素を導入する手法の開発研究が盛んに行われています。とりわけ,フッ素が一つだけ導入された「モノフッ素化物」の合成が重要です。今回柴田らは,出発物質に二つのフッ素を持つ化合物を用い,そこから一つのフッ素だけを選択的に取り除き,モノフッ素化物を合成するという新しい分子変換技術の開発に成功しました。

 この手法の鍵は,強固な炭素―フッ素結合の選択的切断にあります。炭素―フッ素結合は,炭素が作る単結合の中で最も強固であり,炭素―フッ素結合の切断は容易ではありません。切断方法としては金属触媒を用いた方法や強アルカリや強酸の条件での手法が知られていますが,より温和な条件下での切断手法の開発が望まれています。柴田らは,これまでにもこの課題に取り組んでおり(本学プレスリリース|2018年10月22日掲載,https://www.nitech.ac.jp/news/press/2018/7064.html)、今回新たに、フッ素とケイ素の親和性を利用し有機超塩基を触媒に用いることで,金属触媒を用いることなく,選択的に一つだけの炭素―フッ素結合を切断することに成功しました。さらにその際,同時にエポキシ環の生成を伴うという全く新しい分子変換技術を見出しました。

 本研究成果によって含フッ素医農薬品の開発が一層進展することが期待されます。

(図1)

(図2)

柴田研究室

<掲載論文> Asian Journal of Organic Chemistry

<掲載内容> Cover Picture

<発表雑誌>
雑誌名 :Asian Journal of Organic Chemistry
タイトル:Catalytic Desymmetrization of 1,3Difluoropropan2ols via C−F Bond Activation using
     a Phosphazene Base Affords Monofluoromethylsubstituted Epoxides
著  者:Jiandong Wang, Junki Tanaka, Etsuko Tokunaga, Prof. Norio Shibata
論文情報: DOI: 10.1002/ajoc.201900157


この情報は研究支援課が提供しています。