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柴田研究室の研究成果が、Angew. Chem., Int. Ed. 誌 (IF: 12.3) に掲載されました。

2020年03月31日掲載


 研究論文「Synthesis of Both Enantiomers of Nine-Membered CF3-Substituted Heterocycles Using a Single Chiral Ligand: Palladium‐Catalyzed Decarboxylative Ring Expansion with Kinetic Resolution」が高く評価され,Angew. Chem., Int. Ed. 誌に掲載されました。
 Angew. Chem., Int. Ed. 誌は,Wiley-VCHより出版されるドイツ化学会の学術雑誌であり,化学分野の総合学術雑誌のトップジャーナルです。2018年のインパクトファクターは12.3と高い注目度を集めています。
 不斉炭素を環骨格に有する中員環は,生理活性を示す天然物に見られる化学構造として知られています。しかし,従来法による環化反応では,熱力学的要因などの問題から中員環サイズ (7−11員環) の環構築が難しく,特に立体選択的な中員環構築は有機合成の難問とされてきました。
 今回私たちは,トリフルオロメチル(CF3)基を有する合成容易な6員環化合物に対して,パラジウム触媒とキラルリガンドを用いた脱炭酸的[5+4]環化付加による環拡大反応を起こすことで,CF3基を有する複素9員環の不斉合成法を開発することに成功しました(図)。本反応は基質1の速度論的光学分割を伴って反応が進行し,生成物 (R)-4及び,未反応の(S)-1をそれぞれ高立体選択的に得ることが可能です。特筆すべきことに,回収した鏡像異性体(S)-1から高価なキラルリガンドを必用することなく,パラジウム触媒を用いた反応で (S)-4に高収率かつ高立体選択的に変換できます。すなわち本法は,触媒量の単一対掌体 (R)-Tol-BINAPをキラル源として,異なる立体を有する9員環生成物 (R)-4,(S)-4を高エナンチオ選択的につくり分けることが可能な手法です。反応を詳細に解析したところ,本反応は二度の脱炭酸を経由しており,CF3基で置換されたパラジウム双性イオンの発生を鍵としていることが明らかになりました。
 CF3基に代表される含フッ素官能基は医・農薬品開発において特に重要とされている構造です。CF3基が結合した不斉炭素を環骨格に持つ9員環はこれまで合成例がない新規構造であり,特異な生物活性が期待されます。
 本研究成果をもとに,さらなる応用が期待されます。

柴田研究室

<掲載誌> Angewandte Chemie-International Edition
      タイトル:Synthesis of Both Enantiomers of Nine-Membered CF3-Substituted
           Heterocycles Using a Single Chiral Ligand: Palladium‐Catalyzed
           Decarboxylative Ring Expansion with Kinetic Resolution
      
著  者:Hiroto Uno, Nagender Punna, Etsuko Tokunaga, Motoo Shiro
           and Norio Shibata

      論文情報:DOI: 10.1002/anie.201915021

      

     (図)

      図.png                                      


この情報は研究支援課が提供しています。

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