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柴田哲男教授の研究論文が,ACS Catalysis 誌(IF:12.35)に掲載されました。

Research

研究・産学官連携

2020年11月27日掲載


 

論文「Modular Synthesis of Medium-Sized Fluorinated and Nonfluorinated Heterocyclic Lactones by Sequential CN-Bond-Cleaving Ring Expansion under Pd Catalysis」が,ACS Catalysis 誌に掲載されました(図1)。ACS Catalysis誌はアメリカ化学会が出版する,触媒化学のあらゆる領域を対象としたジャーナルであり,2019年のインパクトファクター(IF)12.35です。IFでは,Nature Communications (IF: 12.121)誌やAngewChemInEd (IF:11.69)誌を超える国際誌に成長しています。

薬としての生理活性を発現するためには,薬物の立体構造が重要な役割を果たします。鍵と鍵穴の関係のように,生体内の受容体に対して,薬の構造が上手くフィットすることが重要になります。すなわち,新規な立体構造をもつ化合物は,未知の受容体と作用して,新しい生理活性を引き出す可能性が考えられます。中でも,中員環と呼ばれる812員環をもつ化合物は特徴的な立体構造を有しており,新規医農薬品への応用が期待されています。しかし,熱力学的に不利とされる中員環合成は,汎用性の高いモジュラー合成やフッ素誘導体の簡易合成に課題があり,創薬における壁となってきました。

今回柴田教授らは,フッ素の特性を活かした新規環拡大反応を開発することで,含フッ素中員環のモジュラー合成に初めて成功しました(図2)。フッ素は新薬開発にとって魅力的な元素であり,生理活性などの物性に大きな影響を与えます。実際に,昨年承認された新薬の半数はフッ素化合物が占めています。本研究では,フッ素特有の電子求引性によって,強固なアミド結合が容易に切断可能になることを見出し,双性イオンを挿入することで様々なサイズの中員環合成が可能になりました。これまで難しかった中員環モジュラー合成を可能にすると同時に,付加価値の高いフッ素化合物を与える画期的な合成手法であり,新薬開発への応用が期待されます。

柴田研究室

<掲載誌>  ACS Catalysis

<論文情報>  Modular Synthesis of Medium-Sized Fluorinated and Nonfluorinated Heterocyclic

       Lactones by Sequential CN-Bond-Cleaving Ring Expansion under Pd Catalysis

       Hiroto Uno, Koki Kawai, Motoo Shiro, Norio Shibata

       DOI: 10.1021/acscatal.0c03927

      

        (図1)

         図1.png

     

 

         (図2)

図2.png

                                   


この情報は研究支援課が提供しています。