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バイオマス原料から超耐熱性の生分解性ポリエステルの合成に成功 ― DXを推進するモバイル端末機器のプリント基板などへの応用に期待 ―

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カテゴリ:プレスリリース|2026年4月16日掲載


発表のポイント

○   昨今のマイクロプラスチック問題を背景に、ヒドロキシル―インクリック反応(*1)を用いた超耐熱性生分解性プラスチックの合成に成功
○   工業用活性汚泥中での生分解試験と酵素(リパーゼ)分解試験により生分解性を確認
○   自動車用部品に加え、スマートフォンやモバイル端末といった高度化した電子機器のプリント基板など、耐熱性を要する有機材料への応用につながり、生分解性プラスチックの応用範囲拡大が期待される

概要

名古屋工業大学工学専攻の横井佑音氏(博士前期課程1年)と生命・応用化学類の高須昭則教授は、バイオマス原料であるマンノースの脱水反応で得られるイソマンニドを出発原料に、ガラス転移点(Tg)(*2)176℃を有するポリエステルの合成に成功しました(図1)。本合成手法は、ヒドロキシル基とアルキン化合物のヒドロキシル―インクリック反応を活用しており、室温で3時間で合成できます(図2)。


通常、ポリ乳酸を代表とする生分解性ポリエステルはTgが70℃程度であり、その使用範囲は大きく制限されてきました。近年、デジタルトランスフォーメーション(DX)やモバイル端末の普及に伴い、電子機器用途においても環境負荷低減と高い耐熱性を両立する材料が求められています。本研究で合成したポリエステルは、高い耐熱性を有しており、自動車用部品に加え、スマートフォンやモバイル端末など耐熱性を必要とする電子機器のプリント基板への応用が期待されます。


さらに、工業用活性汚泥中での生分解試験をISOスタンダード (14851)に従って実施したところ、28日後には23%の生分解性を示し、実環境を想定した条件下における生分解性が確認されました。加えて、リパーゼを用いた酵素分解試験においても分解性が確認されました。


本研究成果は、2026年4月15日に米国化学会の国際誌ACS Applied Polymer Materialsのオンライン速報版に掲載されました。

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図1 176℃のTgを示したポリエステルの化学構造

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図2 ヒドロキシル―インクリック反応による超耐熱性ポリエステルの合成法

▶詳細(プレスリリース本文)はこちら

用語解説

(*1)ヒドロキシ―インクリック反応
2020年に発表された新しいクリック反応であり、高効率と高収率を実現する反応である。主に第一または第二アルコールと電子欠乏アルキン間で行われ、穏やかな反応条件で高効率かつ立体選択的に反応が進行する特徴を有している。

(*2)ガラス転移点(Tg)
液体を冷却して結晶化せずに過冷却液体となった後、さらに冷却すると非晶質固体(ガラス)になる温度を指す。この温度より低い状態では、高分子鎖の運動はほぼ凍結され、材料は硬く剛直な性質を示す。一方、Tgを超えると分子鎖が動き始め、材料は柔軟で変形しやすくなり、この変化は、樹脂やプラスチックの剛性、靭性、寸法安定性に大きく影響する。

論文情報

論文名:Synthesis of Unsaturated Poly(ester-ether)s with Ultra-High Thermal Resistance and Biodegradability Using Hydroxyl-yne Click Polymerization
著者名: Yune Yokoi and Akinori Takasu
掲載誌: ACS Applied Polymer Materials
公表日: 2026年4月15日
DOI:10.1021/acsapm.6c00934
URL: https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsapm.6c00934

お問い合わせ先

(研究に関すること)
名古屋工業大学 生命・応用化学類
教授 高須 昭則
TEL:052-735-5266  E-mail:takasu.akinori[at]nitech.ac.jp

(広報に関すること)
名古屋工業大学 企画広報課
TEL:052-735-5647  E-mail:pr[at]adm.nitech.ac.jp

*それぞれ[at]を@に置換してください。