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海洋性細菌が持つ内向きプロトンポンプロドプシンの光反応の分子メカニズムを解明 ~高効率でプロトンを輸送するための光遺伝学ツール開発に期待~

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カテゴリ:プレスリリース|2026年6月 3日掲載


発表のポイント  

●    海洋性細菌から見つかった機能未知の微生物ロドプシン(*1)を解析し、細胞内にプロトン(水素イオン)を取り込む「内向きプロトン輸送活性」を持つことを発見
●    今回発見した新規微生物ロドプシンは、高い輸送効率を維持したまま活性化できることを解明
●    細胞の活性を光により制御する光遺伝学(オプトジェネティクス)(*2)において、社会実装に向けた有用な分子設計のヒントとなる知見を提供

概要

名古屋工業大学工学専攻の服部七奈子氏(博士前期課程2年)、伊藤侑真氏(博士後期課程1年)、生命・応用化学類の古谷祐詞准教授、錦野達郎助教、神取秀樹特別教授らは、海洋性細菌 Guptibacillus hwajinpoensis 由来の微生物ロドプシン「GhXeR」が光を利用して細胞内に水素イオンを取り込む分子機構を明らかにしました。

光を吸収して機能するタンパク質の一種である微生物ロドプシンは、イオン輸送、センサー、酵素など様々な機能を持つことが知られています。海洋性細菌 Guptibacillus hwajinpoensisからも他の微生物ロドプシンとはアミノ酸配列が異なる特徴的な微生物ロドプシンと考えられる遺伝子が見つかっていました。このGhXeRは、内向きプロトン輸送活性を持つロドプシンのグループであるゼノロドプシン(XeR)に分類されますが、具体的な機能と光反応機構は明らかになっていませんでした。

本研究グループは、この微生物ロドプシンの試料調製法を確立し、発色団レチナールが結合することで光を吸収して機能することを示す紫色の試料を得ました。さらに、イオン輸送活性を解析した結果、細胞のpHが低い状態でも強い輸送活性を維持できるという他のXeRにはない独特の機能を持っていることを明らかにしました。また、プロトン輸送におけるGhXeRの光反応過程は他のXeRと類似していたものの、光を吸収する発色団周囲において、GhXeR特有の構造変化が生じていることも突き止めました。

この成果は、光により細胞の活動を制御する光遺伝学研究において、ユニークな分子機構で効率よくイオンを輸送する分子の設計につながり、細胞活動をより厳密に制御できるツール開発への応用が期待されます。

本研究成果は、2026年5月19日に米国化学会の国際誌The Journal of Physical Chemistry Bのオンライン速報版に掲載されました。


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研究概要図


▶詳細(プレスリリース本文)はこちら

用語解説

(*1)ロドプシン
動物の目に存在し視覚を担う機能を持つ動物ロドプシンと、イオン輸送、センサー、酵素反応などの機能を持つ微生物ロドプシンの起原が異なる2種類のロドプシンが存在する。どちらも7回膜貫通膜タンパク質であり、7番目の膜貫通領域のリジン残基に発色団レチナールが結合する共通点を持つ。微生物ロドプシンでは、光照射に伴ってall-trans型レチナールが13-cis型レチナールに異性化することが起点となり、機能を発揮する。本研究の低温赤外分光法では、all-trans型レチナールが結合している始状態と、13-cis型レチナールが結合している初期中間体 (K中間体)の構造変化を解析している。

(*2)光遺伝学(オプトジェネティクス)
光エネルギーを吸収することで機能を発揮するタンパク質を細胞に導入することで、光のオン・オフによりタンパク質の機能を制御し、細胞の活動を制御する技術。微生物ロドプシンは光吸収によって、イオンポンプ、イオンチャネル、酵素等様々な機能を持つものが発見されており、光遺伝学において必要不可欠な光受容タンパク質である。特に、光によってイオンを受動的に輸送するチャネルロドプシンを用いて神経細胞の興奮や抑制を操作するための研究が精力的に進められている。また、動物ロドプシンと微生物ロドプシンを融合したキメラロドプシンは網膜色素変性症治療薬としての開発が期待されており、臨床研究が進んでいる。

論文情報

論文名:Molecular Properties of a Novel Inward Proton Pump Rhodopsin, GhXeR
著者名:Nanako Hattori, Yuma Ito, Yuji Furutani, Tatsuro Nishikino, and Hideki Kandori*(*責任著者)
掲載雑誌名:The Journal of Physical Chemistry B
公表日:2026年5月19日
DOI:10.1021/acs.jpcb.6c01199
URL:https://doi.org/10.1021/acs.jpcb.6c01199

研究支援

本研究は以下の助成により実施されました:
・日本学術振興会 科学研究費補助金(JP21H04969)
・文部科学省「大学の研究力強化促進事業(CURE)」(JPMXP1323015482)
・科学技術振興機構CREST「生命動態」領域(JPMJCR1753)
・科学技術振興機構CREST「細胞操作」領域(JPMJCR25B5)
・公益財団法人豊秋奨学会
・公益財団法人内藤科学技術振興財団
・大幸財団
・立松財団

お問い合わせ先

<研究に関すること>
名古屋工業大学 生命・応用化学類
特別教授 神取 秀樹
TEL:052-735-5207     E-mail:kandori[at]nitech.ac.jp

<広報に関すること>
名古屋工業大学企画広報課
TEL:052-735-5647     E-mail:pr[at]adm.nitech.ac.jp

*それぞれ[at]を@に置換してください。