世界初!光学活性なアジリジン化合物の新しい合成法を開発―医薬品類の開発におけるコストダウンに期待-
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カテゴリ:プレスリリース|2017年6月12日掲載
発表のポイント
- 世界で初めて光学活性なアジリジン化合物の効率的かつ新しい合成法に成功
- この合成を可能にするための触媒(不斉触媒)を新たに開発
- 医薬品類の効率的合成手法の開発が期待される
概要
近年、医薬品、農薬、液晶材料において、光学活性化合物は広く用いられ、その効率的合成法の開発は極めて重要になっています。この光学活性化合物は、構造式は同じでも原子の立体配置が異なります。立体配置が異なると生体への作用も大きく異なるため、有用な物質を選択的に合成できるような手法(不斉合成:高立体選択的合成法)が必要とされています。
今回、名古屋工業大学大学院工学研究科の中村修一准教授らは、様々な医薬品類の合成原料となりえる光学活性なアジリジン化合物に着目しました。このアジリジンの合成法としては、これまで1)イミンからの合成、2)二重結合からの合成、3)光学活性なアミンからの合成法などがありましたが(図1)、これらの合成法には、高価な不斉触媒、原料、稀金属を必要とするなどの欠点がありました。そこで、より簡便かつ効率的な合成法の開発を目指し、アジリンに求核性反応剤(電子の豊富な化学種から電子の不足した化学種へ攻撃反応を行う物質)を反応させることにより、高立体選択的にアジリジンを合成する手法を考案しました。このように高立体選択的にアジリジンを合成する手法は世界で初めての成功例です。
また、今回この反応を可能にするために、不斉触媒を新たに開発しました(図2)。この触媒には求核反応を加速化させる作用があります。この種の触媒はこれまでにもありますが、この構造をもつ触媒は初めてで、これにより光学活性なアジリジン化合物を合成することに成功しました(図3)。
この反応によって合成したアジリジン化合物により、医薬品類の効率的合成手法の開発が期待されます。また、このアジリジン化合物を様々な反応剤と反応させることで、医薬品に多く含まれている光学活性アミン類への誘導も可能なため、より多くの医薬品や農薬、液晶材料開発への展開が期待されます。
![]() 従来の合成法 1)イミンからの合成 2)二重結合からの合成 3)光学活性なアミンからの合成法 |
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新しく開発した不斉触媒 | 新しく開発した不斉触媒による反応 |
掲載情報
- 雑誌名:Angewandte Chemie International Edition
- 論文タイトル:Enantioselective Reaction of 2H-Azirines with Phosphite Using Chiral Bis(imidazoline)-Zn(II) Catalysts
- 著者:Shuichi Nakamura, Daiki Hayama
- DOI番号:10.1002/anie.201704133
- URL:http://dx.doi.org/10.1002/anie.201704133
- また、この研究はEurekAlert!でも紹介されています。
お問い合わせ
研究に関すること
名古屋工業大学大学院工学研究科 生命・応用化学専攻/材料科学フロンティア研究院
准教授 中村修一
TEL:052-735-5245 E-mail:snakamur[at]nitech.ac.jp
報道に関すること
国立大学法人名古屋工業大学 企画広報課 広報室
牧野円香
TEL:052-735-5322 E-mail:pr[at]adm.nitech.ac.jp
*[at]を@に置き換えてください
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