Close

光とホウ素ラジカルで環境にやさしい新手法を開発~切りにくい「炭素-シアノ結合」を室温下で開裂~

News&Topics

カテゴリ:プレスリリース|2026年1月 9日掲載


発表のポイント  

○   ジフェニルホウ素ラジカル(*1)の反応性の開拓と、新規脱シアノ化反応設計指針を確立
○   従来は高温・高圧などの過酷な条件を必要としていた炭素-シアノ結合の開裂を、可視光エネルギーと触媒、ホウ素ラジカルを用いて室温下で環境にやさしく安全に実現
○   医薬品由来の基質を含む38種類のシアノ化合物への適用可能性を提示
○ イソシアノ基の脱離反応への適用による、間接的な脱窒素化の実現

概要

名古屋工業大学生命・応用化学類の安川直樹助教、中村修一教授、工学専攻生命・物質化学プログラムの岡田和佳氏(博士前期課程1年)、小幡航希氏(研究当時:博士前期課程)、工学専攻の吉田悠人氏(博士後期課程1年)、生命・応用化学類の高田主岳教授らの研究グループは、従来過酷な条件を必要としていた「脂肪族ニトリル化合物の脱シアノ化反応」の開発に成功し、これまでにない画期的な新規合成戦略・ホウ素ラジカルの活用法を提案しました。

シアノ基(-CN)は強力な電子求引性を有するため、隣接炭素での脱プロトン化を伴う官能基化が容易です。従って、隣接炭素上の官能基化により炭素骨格を化学修飾した後、不要となったシアノ基を脱離・変換できれば、複雑な炭化水素化合物の構築が可能です。しかし、炭素-炭素結合(C-C)の開裂を伴うシアノ基の脱離反応は、結合解離エネルギーや酸化還元電位が高いため、従来法では強力な金属還元剤や遷移金属、高温・高圧条件が必要でした。このことから、環境負荷が少なく安全な条件でニトリル化合物の脱シアノ化を実現する方法の開発が強く求められていました。

本研究では、光触媒(*2)により生成させたジフェニルホウ素ラジカルの未知の反応性を活用することで、α位に芳香環を持つアセトニトリル類の脱シアノ化反応を穏和な条件下で実現しました(図1)。さらに、イソニトリル化合物を出発原料とすることで、炭素-窒素結合(C-N)の開裂を伴うイソシアノ基(-NC)の脱離も効率よく進行することを見出しました。本研究で確立された手法は、シアノ基やイソシアノ基を起点とした新たな有機合成戦略を提案するだけでなく、これまで注目されてこなかったジフェニルホウ素ラジカルの新たな化学的活用を切り拓く重要な成果です。

本研究成果は、米国化学会の国際学術誌 ACS Catalysis のオンライン速報版に、2026年1月6日付で掲載されました。

260109press_yasukawa.jpg

図1. 本研究の合成戦略:可視光とホウ素ラジカルを組み合わせた脱(イソ)シアノ化反応

▶詳細(プレスリリース本文)はこちら

謝辞

本研究は、JSPS科研費(JP24K17678)、日揮・実吉奨学会、内藤科学技術振興財団、同仁化学学術振興財団(研究代表者:安川直樹)の助成を受けて実施されました。ここに記して謝意を表します。

論文情報

掲載誌:ACS Catalysis
タイトル:Photocatalytic Decyanation of Arylacetonitriles Enabled by Diphenylboryl Radicals via Spin Delocalization and α-Fragmentation
著者名:Naoki Yasukawa*, Waka Okada, Koki Obata, Yuto Yoshida, Kazutake Takada, Shuichi Nakamura*(*責任著者)
DOI:10.1021/acscatal.5c08437
URL:https://pubs.acs.org/doi/full/10.1021/acscatal.5c08437

用語解説

(*1)ジフェニルホウ素ラジカル
ホウ素原子上に2つのフェニル基、不対電子、2p空軌道を有するホウ素ラジカルの1種である。

(*2)光触媒
太陽光やLEDなどの光を吸収し、電子移動や活性種の生成を通して化学反応を促進する触媒。特に、触媒と他の分子間での電子移動を伴う触媒反応を光酸化還元(フォトレドックス)触媒反応という。

お問い合わせ先

(研究に関すること)
名古屋工業大学 生命・応用化学類
助教 安川 直樹
TEL:052-735-5323    
E-mail:yasukawa.naoki[at]nitech.ac.jp

教授 中村 修一
TEL:052-735-5245
E-mail:snakamur[at]nitech.ac.jp

(広報に関すること)
名古屋工業大学 企画広報課
TEL:052-735-5647
Email:pr[at]adm.nitech.ac.jp

*それぞれ[at]を@に置換してください。