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細菌の光情報伝達のトリガーを解明!― 医療応用につながる光遺伝学ツールの開発へ前進 ―

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カテゴリ:プレスリリース|2026年2月 3日掲載


発表のポイント  

○   光感受性細菌ではたらく光受容タンパク質であるセンサリーロドプシンIIの情報伝達の鍵となる構造変化を解明
○   赤外分光法の感度を増強する金薄膜で膜タンパク質の配向を制御
○   センサリーロドプシンIIの表面密度の上昇が情報伝達に必要であることを解明

概要

名古屋工業大学工学専攻創造工学プログラムの坂本達哉氏(博士前期課程2年)、生命・応用化学類の錦野達郎助教、古谷祐詞准教授らの研究グループは、光感受性細菌の光センシングにおいて、最初の情報伝達に関わるセンサリーロドプシンIIの光誘起構造変化を、高感度赤外分光法により解明しました。

センサリーロドプシンIIは、青色光を受容し、情報伝達タンパク質HtrIIを介して、細菌のべん毛の回転方向を制御します。光感受性細菌にとって不要かつ危険な青色光から逃避する、負の走光性に関わる光センサーです。HtrIIは、化学物質に対する誘因・忌避を示す走化性の受容体との類似性があり、べん毛の回転方向制御との関連は詳しく調べられています。一方、光センサーであるセンサリーロドプシンIIからHtrIIへ、最初にどのように光情報が受容されるのかについては、光センサー独自の分子メカニズムがはたらくと考えられ、特に注目されて研究がなされてきました。

今回、赤外線の感度を増大させる表面増強赤外分光法(SEIRAS)(*1)を活用することで、センサリーロドプシンIIとHtrIIの膜内での配向を揃えた状態で計測することに成功しました。その結果、タンパク質の表面密度の上昇が情報伝達の鍵となる構造変化を引き起こすために必要であることを解明しました(図1)。また、最初の情報伝達に必要な構造変化には、HtrIIの膜貫通領域の部位が重要な役割を果たしていることも明らかにしました。本研究は、細菌の運動を光制御する新規の光遺伝学ツールの開発につながる成果です。

本成果は、2026年2月1日に米国化学会のオープンアクセス誌ACS Omegaのオンライン速報版に掲載されました。260199press_furutani.jpg

図1 SEIRASの模式図とSRII-HtrIIの表面濃度依存的な赤外吸収スペクトルの変化

▶詳細(プレスリリース本文)はこちら

論文情報

論文名:Surface density-dependent interactions between photoactivated sensory rhodopsin 2 and its transducer
著者名:Tatsuya Sakamoto, Jingyi Tang, Soichiro Kato, Insyeerah Binti Muhammad Jauhari, Tatsuro Nishikino and Yuji Furutani*   *責任著者
掲載雑誌名:ACS Omega
DOI:10.1021/acsomega.5c12030
URL:https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsomega.5c12030

用語解説

(*1)表面増強赤外分光法(Surface-enhanced infrared absorption spectroscopy; SEIRAS)
金や白金などの貴金属の薄膜や微粒子によって、貴金属表面に吸着した分子による赤外線の吸収が増大する現象を利用した赤外分光法。電極表面の化学変化を赤外吸収スペクトルで分析する技術として発展したが、タンパク質などの生体分子の構造や反応を解析する技術としても有効である。

研究支援

本研究は以下の助成により実施されました:
•    日本学術振興会 科学研究費補助金(JP24H00451)
•    文部科学省「大学の研究力強化促進事業(CURE)」(JPMXP1323015482)
•    科学技術振興機構CREST「細胞操作」領域(JPMJCR25B5)
•    大幸財団、立松財団

お問い合わせ先

(研究に関すること)
名古屋工業大学 生命・応用化学類
准教授 古谷 祐詞
TEL:052-735-5127    
E-mail:furutani.yuji[at]nitech.ac.jp

(広報に関すること)
名古屋工業大学 企画広報課
TEL:052-735-5647
Email:pr[at]adm.nitech.ac.jp

*それぞれ[at]を@に置換してください。