フッ素循環型社会に向けたPFAS分解技術の最前線と課題
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カテゴリ:プレスリリース|2026年4月 1日掲載
発表のポイント
○ PFAS(*1)分解研究の急速な進展と「壊せる時代」の到来
○ 「分解」から「資源循環」への発想転換
○ フッ素を回収・再利用する新概念の提示
○ 分解技術の到達点と今後の課題を体系的に整理
概要
近年、環境中に蓄積するPFAS問題の解決に向けて、分解技術の研究が世界的に急速に進展しています。特にこの1年で、光化学的手法やメカノケミカル手法などにより、従来は極めて困難とされてきた炭素-フッ素(C-F)結合の切断とフッ素の回収が現実的なものとなってきました。
名古屋工業大学生命・応用化学類の趙正宇助教と柴田哲男客員教授は、PFAS分解に関する最新の研究動向を体系的に整理し、「分解」から一歩進んだ「フッ素資源の再利用」という新しい概念――すなわち「フッ素循環型社会(fluoro-circular economy)」の可能性を提案しています。従来、PFASは環境負荷物質として「除去・廃棄」の対象とされてきましたが、本研究はそれらを「二次的なフッ素資源」と捉え直し、無機フッ化物として回収・再利用することで持続可能な化学プロセスへと転換できることを示しています。さらに、代表的な分解手法(光化学、電気化学、メカノケミカル法、ナトリウム分散法など)を比較し、それぞれの利点と限界を明確にするとともに、現時点では「分解効率」だけでなく「回収したフッ素の再利用」までを一体化した技術が重要であることを指摘しています。また、環境中の極微量PFASの回収、水存在下での反応制御、安全性やスケールアップといった未解決課題も整理しました。
本研究は、PFAS問題を単なる「分解・無害化」の枠を超えて、「資源循環」という視点から再定義するものであり、今後の環境化学・フッ素化学における研究指針を提示するものです。フッ素資源の持続可能な利用と環境負荷低減を両立する新しいパラダイムの確立に向けた重要な一歩といえます。
本論文は、アメリカのセル出版(Cell Press)が発行する学術雑誌「Chem Circularity」のオンライン速報版に、 2026年3月31日付(日本時間4月1日)で掲載されました。

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謝辞
本研究は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業CREST 研究領域「分解・劣化・安定化の精密材料科学」(研究総括:高原淳(九州大学 ネガティブエミッションテクノロジー研究センター 特任教授))における研究課題「フッ素循環社会を実現するフッ素材料の精密分解」(研究代表者:柴田哲男)(課題番号JPMJCR21L1)、元島栖二博士(CMC総合研究所)の支援を受けて実施しました。
論文情報
論文名:Toward a circular fluoropolymer economy coupling PFAS degradation and fluorine reutilization
著者名:Zhengyu Zhao、 Norio Shibata*
*責任著者
掲載誌:Chem Circularity
DOI: org/10.1016/j.checir.2026.100016
公開日:2026年3月31日24時
Journal link: https://doi.org/10.1016/j.checir.2026.100016
用語解説
(*1)PFAS
Per- and Polyfluoroalkyl Substances(ペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物)の略称。熱、水、油に強いという特徴を活かし、焦げ付きにくい調理器具、食品包装、汚れにくい布地など様々な製品に使用されている。また、ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)、ペルフルオロオクタン酸(PFOA)、ペルフルオロヘキサンスルホン酸(PFHxS)は発がん性などの健康被害の可能性が報告され、特定PFASとして規制対象となっている。
お問い合わせ先
(研究に関すること)
名古屋工業大学 生命・応用化学類
客員教授 柴田 哲男
TEL: 052-735-7543 メール:nozshiba[at]nitech.ac.jp
(広報に関すること)
名古屋工業大学企画広報課
TEL: 052-735-5647 メール:pr[at]adm.nitech.ac.jp
*それぞれ[at]を@に置換してください。
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