国立大学法人名古屋工業大学

文字サイズ
検索

News&Topics一覧

ホーム > News&Topics一覧 > プレスリリース:アルミの製造コスト削減につながる使用量を低減できる結晶粒微細化剤の開発に成功

アルミの製造コスト削減につながる使用量を低減できる結晶粒微細化剤の開発に成功

カテゴリ:プレスリリース|2017年11月09日掲載


 名古屋工業大学の渡邉義見教授・佐藤尚准教授らの研究グループは、アルミ鋳造時に強度向上のために使用されている結晶粒微細化剤(以下、微細化剤)中の異質核粒子の割合を、従来微細化剤に比べて4倍以上含有させることに成功しました。これにより、使用量を1/4以下に低減することが可能になり、製造コストに占める微細化剤コストの割合を縮小し、全体のコスト削減に寄与することが期待されます。
 この研究成果は、118日~10日にドイツ、ブレーメンで開催される国際会議The 2nd International Conference on Light Materials - Science and Technology(第二回軽金属国際会議、LightMAT 2017)にて発表する予定です。また、今回の成果は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の平成28年度中堅・中小企業への橋渡し研究開発促進事業を実施した結果、得られたものです。

背   景

 省エネ化社会の実現に向けて機械系構造部材の軽量化と小型化が求められています。アルミは、比強度(密度あたりの引張強さ)が高く、熱伝導性にも優れており、工業的に多くの場所で使用されています。その中で、アルミ製品を鋳造で製造した際の組織の粗大化による機械的性質の低下が問題視されており、その解決策として微細化剤の添加によるアルミ鋳造組織の微細化が行われてきました。それと同時に、生産コストに占める微細化剤コストの削減が求められており、組織の微細化の基となる異質核粒子を、大量に含有した微細化剤の開発が求められていました。

研究の内容

 従来のAl-Ti-B微細化剤では、異質核粒子である板状Al3Tiの結晶構造の対称性の悪さやTiB2の凝集といった問題点がありました。そこで、渡邉教授らは、従来よりもアルミとの整合性が良く、より有効な異質核粒子としてAl2.7Fe0.3Tiを採用し、アルミ母相中にこの異質核粒子を10%含んだAl-10 vol%Al2.7Fe0.3Ti微細化剤を開発しました(図1)。しかし、この微細化剤は、アルミに対して優れた微細化能を発揮することが分かったものの、粉末を焼結して製造するという工程があるために、工業的に使用するにはコスト削減が必要とされていました。そして今回、Al-Al2.7Fe0.3Ti微細化剤中の異質核粒子を従来の4倍以上含有させた微細化剤の開発に成功し、その微細化能を確認しました(図2)。今回開発した異質核粒子の体積分率の高い微細化剤では、微細化剤の添加量を減少させても多量の異質核粒子を添加できます。そのため、従来のAl-Ti-B微細化剤と比較しても微細化剤の使用量を1/4以下に低減でき、コストの低減を実現しました。また、同時にこの微細化剤を生産するプラントを株式会社真壁技研と共同で開発しました。このプラントでは、同一の低酸素濃度雰囲気下にて、ガスアトマイズによる粉末製造から、分級・混合、放電プラズマ焼結が可能です(図3)。微細化剤を月産200kgで製造することを目標としており、NEDOの援助を受けて研究開発を進めています。

図1渡辺先生.png図1:微細化剤の観察写真

図2渡辺先生.png

図2:微細化剤有無のアルミ鋳造組織

図3渡辺先生.png3:微細化剤の製造プロセス

今後の展開

 以上のように、異質核を4倍以上含有した微細化剤を提供できる様になっていますので、今後は異質核の均一分散性を高めることで、異質核粒子の体積分率をより高くした微細化剤や安価にこの微細化剤が製造できるプロセスを開発していきます。

本件へのお問い合わせ

研究に関すること

 国立大学法人名古屋工業大学大学院工学研究科物理工学専攻 教授 渡邉義見
 TEL:052-735- 5624 E-mail:yoshimi[at]nitech.ac.jp 

広報に関すること

 国立大学法人名古屋工業大学広報室 水野棟税
 TEL:052-735-5647 E-mail: pr[at]adm.nitech.ac.jp

※[at]を@に置換してください。


ページトップへ