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礒部准教授らの日米仏国際共同論文が、Physical Review E誌25周年マイルストーン論文に選出

カテゴリ:プレスリリース|2018年10月31日掲載


 本学大学院工学研究科物理工学専攻、礒部雅晴准教授らの日米仏国際共同論文(2013年発表)が、アメリカ物理学会発行Physical Review Eの創刊25周年マイルストーン論文に選出されました。
 Physical Review E誌は、物理学で最も権威のある専門誌として知られるPhysical Reviewシリーズの一つで、発展著しい統計物理、非線形物理、生物物理、ソフトマターなどを主とする分野として、1993年に創刊されました。2015年9月までに50,000論文を出版した分野を代表する専門誌として知られています。
 このたび25周年を記念し、分野で最も重要な貢献をした論文が各年1本(合計25本)選考され、本論文は2013年に発表された約2500超の論文から選出されたマイルストーン論文となりました。

 物質(たとえば水など)が凍る・融けることは身近に体験する現象ですが、これは「相転移」と呼ばれます。相転移を起こすとき分子の世界では何が起きているのでしょうか?硬い球(反発するミクロなパチンコ玉のようなもの)を箱の中にたくさん入れてみます。箱が大きいとき球は乱雑に動き回ります(液体相)。箱を徐々に小さくすると球の間隔が狭まり衝突も頻繁に起こります。さらに小さくすると球が規則的に格子状にそろいます(結晶相)。この「液体-結晶」相転移は、コンピューター黎明期における初期の分子シミュレーションで発見され、「アルダー転移」と呼ばれ広く知られています。分子がもし2次元平面上(薄膜や界面など)だけ動ける場合、相転移はどう変化するでしょうか?3次元球と同様に不連続に(1次)相転移が起こるのか、コステリッツ・サウレス型(2次)相転移(2016年ノーベル物理学賞受賞)が2回起こるのか、半世紀にわたり2つの学説が論争となり混乱を極めていました。
 本論文では、フランス(パリ)のエコールノルマルシュペリウール、米国ミシガン大学アナーバー校などとの日米仏国際共同研究により、この50年来の難問「2次元融解問題」の解明をめざしました。エコールノルマルシュペリウールの著者らが先駆けて出版した論文(Physical Review Letters,107,155704 (2011))を検証すべく、世界の3極で開発された全く異なる強力なアルゴリズムにより世界最大規模の計算をそれぞれが独立に実行しました。それらの結果は高精度で一致し、液相-Hexatic相間1次相転移を示しました。つまり、50年来の難問の正解は、2つの説のどちらでもなくその中間であることが明らかとなりました。「物質が凍る」というとても身近で単純な系においても大きな神秘が隠されていました。このため本論文は発表直後にいくつかのプレスリリースが刊行され、また現在までに論文のインパクトを測る引用指標もハイレベル(Top1%)で推移しており、世界から大きな注目を集めています。

選定されたマイルストーン論文:
DOI: https://doi.org/10.1103/PhysRevE.87.042134
"Hard-disk equation of state: First-order liquid-hexatic transition in two dimensions with three different simulation methods", (2次元剛体球系の状態方程式:3つの独立な手法を用いた大規模数値シミュレーションによる液体ーヘキサティック相間1次相転移の検証)
Physical Review E, vol. 87, 042134, (2013).
Michal Engel1, Joshua A. Anderson1, Sharon C. Glotzer1, Masaharu Isobe2,3, Etienne P. Bernard4, Werner Krauth5
1.Department of Chemical Engineering, University of Michigan, Ann Arbor, Michigan 48109, USA
2.Graduate School of Engineering, Nagoya Institute of Technology, Nagoya, 466-8555, Japan
3.Department of Chemistry, University of California, Berkeley, California 94720, USA
4.Department of Physics, Massachusetts Institute of Technology, Cambridge, Massachusetts 02139, USA
5.Laboratoire de Physique Statistique, École Normale Supérieure, UPMC, CNRS, 24 Rue Lhomond, 75231 Paris Cedex 05, France
(所属は、発表当時のもの)

181031isobe1.jpg

(Copyright: M. Engel - Friedrich-Alexander University Erlangen-Nürnberg, Germany)
2次元大規模剛体球系(約100万粒子)における典型的な液体―Hexatic共存相(1次転移を示唆)。
各粒子の色は最隣接粒子の配向に対応し(図上部)、液相やHexatic相を特徴づける。

Ecole Normale Superieureプレスリリース(2013)の日本語翻訳(礒部)
「2次元剛体球系の融解現象:50年にわたる古いパズルの解明」
http://stat.fm.nitech.ac.jp/~isobe/2D_melting_Japanese.htm

Physical Review E 25th Anniversary Milestones
https://journals.aps.org/pre/collections/pre-25th

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お問い合わせ先

研究に関すること

名古屋工業大学大学院工学研究科 物理工学専攻
准教授 礒部 雅晴
Tel: 052-735-5371
E-mail: isobe[at]nitech.ac.jp

広報に関すること

名古屋工業大学 企画広報課
Tel: 052-735-5647
E-mail: pr[at]adm.nitech.ac.jp

*それぞれ[at]を@に置換してください。


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