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新規の脱塩素化微生物を用いた汚染土壌・地下水浄化技術を開発 ~原位置浄化により高濃度のクロロエチレン類を分解・無害化~

カテゴリ:プレスリリース|2019年10月29日掲載


株式会社竹中工務店
国立大学法人名古屋工業大学

 竹中工務店(社長:佐々木正人)と名古屋工業大学(学長:鵜飼裕之)は、高濃度のクロロエチレン類を無害なエチレンまで原位置浄化※1できる脱塩素化微生物(デハロコッコイデス属細菌)を分離・培養して、汚染土壌・地下水を効率的に浄化する技術を開発しました。

 土壌・地下水を汚染する物質には、揮発性有機化合物、重金属、ポリ塩化ビフェニル・ダイオキシン類、油などがありますが、揮発性有機化合物が国内の土壌・地下水汚染の全対策件数の約55%※2を占めます。そのなかでも、クロロエチレン類であるテトラクロロエチレンとトリクロロエチレンおよびその分解生成物による汚染が最も多くを占めています。
 微生物の働きを利用して汚染土壌・地下水を浄化するバイオレメディエーション(バイオ浄化法)には、従来手法のバイオスティミュレーション※3と新手法のバイオオーグメンテーション※4があります。バイオスティミュレーションは、高濃度汚染の用地や土着の分解微生物が存在しない用地では適用できず、また浄化に年単位の時間が必要でした。そのため、費用や環境負荷の高い掘削除去を選択せざるを得ない、あるいは土地の有効活用が進まないという課題がありました。
 このたび開発した汚染土壌・地下水浄化技術は、デハロコッコイデス属細菌を栄養剤とともに注入井戸から汚染土壌・地下水へ直接注ぎ込むことで、高濃度のクロロエチレン類を分解・無害化するバイオオーグメンテーションです。本微生物は名古屋工業大学が分離に成功したもので、300 mg/L(地下水環境基準の3万倍)を超えるトリクロロエチレンを25日で脱塩素化するほどの高分解能力、高濃度耐性を有します。本技術は、掘削除去と比較してコストを50%以下に削減、バイオスティミュレーションと比較して浄化期間を2/3以下に短縮できます。

 なお、本微生物を用いた浄化事業計画について、平成17年3月に経済産業省と環境省が策定した「微生物によるバイオレメディエーション利用指針」※5への適合確認を、名古屋工業大学と連名で取得しました。

191029yoshida1.jpg図1 開発技術(バイオオーグメンテーション)の概要図

本技術の特長

(1)従来は掘削除去せざるを得なかった高濃度汚染の用地や土着の分解微生物が存在しない用地に対しても適用が可能。
(2)上記の用地に対して安価なバイオ浄化法(バイオオーグメンテーション)が適用可能となり、掘削による汚染土壌の除去の場合と比較して、コストを50%以下に削減。
(3)高分解能力の微生物を利用することにより、従来のバイオスティミュレーションと比較して、高濃度汚染用地での浄化期間を2/3以下に短縮。
(4)本微生物を利用した浄化方法については、経済産業省と環境省の策定した「微生物によるバイオレメディエーション利用指針」の適合確認を受けており、安全性の高い微生物であることを確認済み。

 本技術開発は、竹中工務店と名古屋工業大学大学院工学研究科 吉田奈央子准教授の共同研究です。

※1 原位置浄化:汚染された土壌・地下水を、掘削を行わずにその場で浄化すること
※2 一般社団法人土壌環境センターの調査結果より
※3 バイオスティミュレーション:バイオレメディエーションのうち、栄養剤等を加えて汚染サイトに生息している微生物を活性化させて浄化する技術
※4 バイオオーグメンテーション:バイオレメディエーションのうち、予め外部で培養した微生物を栄養剤等とともに土壌・地下水中に投入することにより浄化する技術
※5 微生物によるバイオレメディエーション利用指針:生態系等への影響に配慮した適正な安全性評価及び管理手法のための基本的な考え方を指針として示し、事業者が活用することで、バイオレメディエーション事業の一層の健全な発展及び環境保全に資することを目的とする

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図2 本技術で利用する脱塩素化微生物の電子顕微鏡写真

 

 

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図3 クロロエチレン類に対する当該微生物を用いた脱塩素化化の促進

お問い合わせ先

㈱竹中工務店 広報部
TEL:03-6810-5140


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