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層状有機-無機ハイブリッド材料により摩擦を低減 ~フッ素樹脂に代わる新たな固体潤滑剤として期待~

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カテゴリ:プレスリリース|2025年10月14日掲載


発表のポイント

〇 層状有機-無機ハイブリッド材料の銀チオラートが優れた固体潤滑性を示すことを実証
〇 銀チオラートの構造と固体潤滑性の関係を調べることで、潤滑メカニズムを提示
〇 構造設計に高い自由度を有するため、用途に合わせた固体潤滑剤を合理的に開発可能に

概要

名古屋工業大学の村松怜氏(工学専攻ソフトマテリアルプログラム2年)、江口裕助教(生命・応用化学類)、永田謙二教授(生命・応用化学類)らの研究グループは、銀イオンとチオラト配位子から合成できる層状有機-無機ハイブリッド材料(*1)の銀チオラートが、既存の固体潤滑剤と同等以上の優れた固体潤滑性を示すことを見出しました。また、種々の構造を有する銀チオラートを系統的に評価することで、潤滑特性の発現メカニズムを明らかにしました。

摩擦によるエネルギー損失は世界のエネルギー消費量の約20%に及ぶとされ、潤滑剤の性能向上は製品の省エネ化や長寿命化に貢献します。さらに、フッ素樹脂のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の使用制限に関する議論が進む中、銀チオラートは高い設計自由度と潤滑性を兼ね備えており、その構造をうまく設計することで、新たな固体潤滑剤が開発できると期待されます。

本研究成果は、国際学術誌Langmuirオンライン速報版に2025年10月11日付で掲載されました。

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▶詳細(プレスリリース本文)はこちら

謝辞

本研究は、JSPS科研費(JP23K13558、JP25K08289)、中部科学技術センターの令和6年度 学術・みらい助成、および天野工業技術研究所の2025年度研究助成を受けて実施されました。手厚いご支援に対して心より感謝を申し上げます。

論文情報

論文名:Organic-Inorganic Hybrid Solid Lubricants Based on 2D Silver Thiolate Coordination Polymers Featuring Precise Interlayers
著者名:Ren Muramatsu, Hiroshi Eguchi*, Kenji Nagata
*責任著者
掲載誌:Langmuir
公表日:2025年10月11日
DOI:10.1021/acs.langmuir.5c02967
URL:https://pubs.acs.org/doi/full/10.1021/acs.langmuir.5c02967

※本論文はChemRxivにてプレプリントとして公開されております。
DOI: 10.26434/chemrxiv-2025-t5whw
URL:https://chemrxiv.org/engage/chemrxiv/article-details/688def49728bf9025ea45261

用語解説

(*1)有機-無機ハイブリッド材料
有機成分と無機成分が分子スケールで複合化された材料で、単一成分では実現が難しい高機能材料の設計が可能になる。

お問い合わせ先

研究に関すること

名古屋工業大学 生命・応用化学類
助教 江口 裕
TEL: 052-735-5303
E-mail: eguchi.hiroshi[at]nitech.ac.jp

広報に関すること

名古屋工業大学 企画広報課
TEL: 052-735-5647
E-mail: pr[at]adm.nitech.ac.jp

*[at]を@に置換してください。