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若手研究イノベータ養成センター 若土弘樹特任教員の研究成果が「Scientific Reports」(Nature Publishing Group)に掲載されました

カテゴリ:ニュース|2015年04月14日掲載


 名古屋工業大学、米国カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究チームは世界で初めて同一周波数でも特定の電波波形を選択して吸収できる波形選択材料を開発し、さらに無線通信へと応用することで通信特性の制御に成功しました。
本研究成果は英科学誌「Scientific Reports」(電子版)(Nature Publishing Group)に掲載されました。

 従来、自然界に存在する材料は周波数が固定された場合、常に同様の振る舞いをするものと考えられてきました(添付資料1左参照)。これに対して、本研究チームは2013年12月に同一周波数でも波形、すなわちパルス幅と呼ばれる新たな概念に基づいて、短いパルスに対して強い吸収特性を持ち、長いパルスを透過する電磁界材料を開発してきました(Physical Review Lettersで発表、Natureでも紹介)。今回開発された材料はこの特性とは反対に、長いパルスのみを吸収し、短いパルスを透過することに成功しました。さらにこれまでの材料と組み合わせることで、中間のパルスのみ吸収する特性や、中間のパルスを透過し短いパルスと長いパルスを吸収する特性を開発しました(添付資料1右)。これにより、あらゆるタイプのパルス波形(短いパルス、長いパルス、中間のパルス)を選択的に吸収または透過できる材料の開発に成功しました。
 波形選択材料は従来の電磁界特性を新たな次元で操作できることから、広く電磁界研究分野への応用が期待され、既存の様々な問題を新たな切り口から解決できるようになります。その一例として、本研究では無線通信への応用を想定し、電波の通信経路に波形選択材料を配置した状況を模擬、評価しました。この時、波形選択材料の吸収特性によって不要なパルスを取り除き、同一周波数でも特定のパルスを選択して通信できることを示しました。
 とりわけ、無線通信への応用は我が国の重要課題として総務省の戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE)でも解決が急務とされている「周波数資源(電波利用枠)の枯渇問題」への新たなアプローチとなります。ここでの問題として、既存の電波利用枠は「周波数」という1つのパラメータに基づいて各通信アプリケーション(テレビ、携帯電話、無線LAN、気象レーダなど)の利用に割当てられているものの、近年の通信機器に対する急速な研究開発と需要の高まりによって、電波利用枠は既存のアプリケーションによってほぼ占有されていることが挙げられます。これに対し、波形選択性は同一周波数信号でもパルス幅に応じた選択的な透過(受信)を実現でき、同一周波数資源をパルス幅毎に切り分けて共有することができると考えられます。すなわち、電波利用枠は「周波数」と「パルス幅」の2つのパラメータによって分配できるようになり、二次元的な(飛躍的な)拡張が期待されます(添付資料2参照)。パルス幅の導入により大幅に拡張された電波利用枠は、周波数が限られていたため実現できなかったこれまでにない新しい電波利用の形を創造すると期待されます。

特記事項
本研究の一部は総務省戦略的情報通信研究開発推進事業の委託により実施されました。

問い合わせ先
若手研究イノベータ養成センター テニュアトラック助教 若土弘樹
TEL & FAX: 052-735-5504  e-mail: wakatsuchi.hiroki@nitech.ac.jp


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