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名古屋市行政区ごとの熱中症搬送者数予測技術の開発 ~熱中症搬送者数は今週から増加が見込まれます~

カテゴリ:プレスリリース|2020年07月22日掲載


発表のポイント

〇 名古屋工業大学と名古屋市消防局が、救急搬送者数予測技術開発に向けた共同研究を締結
〇 名古屋市消防局のビッグデータと名古屋工業大学の予測技術との融合
〇 行政区ごとの分析に基づく熱中症リスク啓発活動と救急隊の効率的な運用への応用が期待

概要

 名古屋工業大学と名古屋市消防局の共同研究グループは、円滑な救急活動を支援するための救急搬送者数予測技術の開発に向けた共同研究を締結いたしました。
 
名古屋工業大学では、名古屋市消防局から提供された過去6年分の救急搬送実績に関するビックデータの分析を行い、名古屋市行政区ごとの熱中症搬送者数予測技術を開発いたしました。今後、さらなる高精度化と、名古屋市消防局との連携による普及啓発活動などへの応用に向けて取り組んでいきます。

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図(左)各行政区における熱中症搬送者数予測例(右)名古屋市における今後の熱中症搬送者数予測

研究の背景

 熱中症による救急搬送人員数は、年々増加傾向にあります。今後の人口減少社会においても、温暖化と高齢化が相まって、救急出動件数はさらに増加する傾向にあります。
 名古屋工業大学の研究グループでは、50を超える組織構成を考慮した詳細な人体モデルを対象とした大規模シミュレーションによる発汗量、体温上昇の推定技術を開発、また、気象データと計算シミュレーション技術を融合することにより、高齢者における一日当たりの熱中症搬送者数を予測する技術を開発してきました(2019年7月17日プレスリリース.Environment International誌掲載)。一方、名古屋市消防局では、日々の救急活動を通じて得られたビックデータを蓄積し、救急の観点から市民に向けて、熱中症予防に向けた啓発活動に積極的に取り組んできました。
 この度、名古屋工業大学と名古屋市消防局が共同研究を開始し、その共同研究の一環として、行政区ごとの熱中症搬送者数を推定可能とする技術を開発いたしました。

研究内容

 名古屋工業大学研究グループでは、名古屋市消防局から提供されたビックデータを解析し、気象データから各行政区ごとの熱中症搬送人員数を推定可能なモデル式を提案しました。さらにAI(機械学習)を用いた予測にも取り組みました。
 熱中症発生機序の違いに着目し、屋内発症を平均気温、屋外発症はWBGTで予測可能としました。また、AIによる予測モデルも構築し、両者を比較しました。その結果、AIによる予測と、モデル式による予測ではほぼ同精度の予測結果が得られました。また、中村区、中区といった昼間流動人口の多い区では、屋外での発生率が他の区に比べて高くなっていることが分かりました。

有用性と今後の展望

 本技術は、地域特性を考慮した熱中症搬送者数予測技術の実用化に向けた基礎検討となります。今後、この技術の応用によって、地域ごとの夏季屋外イベントなどへの情報も考慮したピンポイントな予測が可能となり、予測結果をもとに熱中症リスクを低減した計画・対策の立案、より具体的で丁寧な注意喚起が期待されます。また、消防局による試算では、熱中症による搬送者数が50人/日を超えると、救急隊が高稼働となり現場到着までに時間を要するケースが頻発するとされています。熱中症搬送者がある一定数を超えると予測される日に、アラートをかけるなど、将来的には、救急隊のみならず医療体制も含めた救急システムの効率的な運用への実用が期待されます。

お問い合わせ先

研究に関すること

名古屋工業大学 先端医用物理・情報工学研究センター
教授 平田晃正
TEL: 052-735-7916
E-mail: ahirata
[at]nitech.ac.jp

名古屋市消防局救急部救急課救急係
担当:渡邉・川口・白神
TEL: 052-972-3552

広報に関すること

名古屋工業大学 企画広報課
Tel: 052-735-5647
E-mail: pr[at]adm.nitech.ac.jp

*それぞれ[at]を@に置換してください。


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