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9月17日(木)経営協議会のメンバー7名と学長が対談を行いました

カテゴリ:ニュース|2015年10月28日掲載


 グローバル化の進行、世界的な産業構造の変化、少子・高齢化など多様な課題に直面しており、国立大学にはこれらの課題の解決に向けた教育研究機能の強化と社会的な貢献が求められています。
他方で国立大学の経営をめぐり、その在り方、強化策など文部科学省においても新たな政策が策定されております。今回は、このような情勢を踏まえ、中京地域の産業界を中心に構成する本学経営協議会の学外委員のみなさまに、国立大学としての本学の在り方・期待等について、意見交換をお願いしました。

日時:9月17日(木)16:10-17:30  
場所:名古屋工業大学会議室
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出席者(敬称略):
浅野幹雄 豊田通商株式会社取締役副社長
伊藤正彦 株式会社デンソー取締役 専務役員
生方眞哉 株式会社生方製作所代表取締役会長
郡健二郎 公立大学法人名古屋市立大学理事長・学長
榊直樹  学校法人東邦学園理事長・学長
堀龍之  丸の内総合法律事務所代表弁護士
宮内一公 トヨタ自動車株式会社専務役員
鵜飼裕之(司会) 国立大学法人名古屋工業大学 学長

テーマ1 国立大学運営費交付金による3つの重点支援の枠組みについて

学長:報道等で御承知のように、現在国立大学の教育研究、あるいは経営において、様々な改革及び議論が進んでいます。先日、国立大学の3つの重点支援の枠組みが発表され、その枠組みの中で国立大学を評価し、それに応じて予算を配分することになりました。枠組み①として、人材育成や課題解決で地域に貢献し、なおかつ特色のある分野で世界あるいは全国的な教育研究を行う大学、86大学のうち55大学がこれを選択しています。枠組み②が、特色ある分野で、地域というよりは世界全国的な教育研究を行うというものです。これは15大学です。そして、枠組み③はいわゆる海外の大学あるいは研究機関と伍して全学的に世界最高水準の教育研究を行う大学として16大学です。
本学は枠組み①「地域に貢献+特色のある分野で世界あるいは全国的な教育研究」を推進する大学となりました。
枠組み①を選択した経緯は、予算の仕組みのなかで3つの枠組みがつくられた上で、それぞれの類型の評価指標が示され、その評価指標に適合するように大学に選択させられました。本学としては、①を選択しました。まずは、その点についてのご意見をお願いします。

<地域貢献の評価は難しいのではないか>
委員:工学部というのは、地域貢献ということになると、なかなか評価が難しいのではないのでしょうか。つまり産学連携とか具体的な産業基盤とか、そういう問題が生じて、地域貢献という評価軸が打ち出しにくいという面もあると思います。

<地域に根差した実践型の大学にするのが良いのではないか>
委員:名工大と言えば、実践型の学生が多い印象です。例えば、機械工学科で鋳造の実習をやっていました。他の大学ではそのような実習はやっていませんでした。「ス」がどうだとか「ヒケ」がどうだとか、こういう話は他の大学の卒業生はわかりません。そういうことを1回でも経験していると、就職後、非常に有用になるものです。そういう意味では、地域に根差した実践型の大学にするのがいいのではないかと個人的には思います。

<時代が逆戻りしている感がある>
委員:大学制度の根本にかかわる問題ですが、戦後、昭和24年の新制大学発足のころは、大学は良くも悪くも一列に横並びでスタートしたと思っています。それがちょっと前の中教審では7類型と言っていて、ついに3類型に行き着き、時代がどんどん後ろに戻っているように思います。
これまでの流れ、また、少なくともこの20年の中教審の流れを見ても、次の流れは読めると思います。国立大学周辺の動きを傍らで見ていても、3分類のような政策に抗する動きはほとんど見えてこなかった。もし、一部の大学で出しているような声明文を作られれば、個人的には喜んでサインしたと思っています。そういう動きをしないと、私たちがここにいる役目・使命を果たせないと思っています。

<中京地域、東海地域を世界の卓越した地域に>
委員:1類型をあえて積極的に選んだという説明をしたほうが良いと思います。受験生の偏差値であるとか、いろんな大学のランキング的なことに見られがちなところがありますが、そうではなく名古屋工業大学は、まずはこういう経緯でこういうふうに選んだということを、学内外に明確に強く発する必要があると思います。
この地域の産業あるいは地域の企業と一緒になって、そこに貢献していくこと、そのことによって、この中京地域とか東海地域が、それこそ世界に卓越した地域になるという捉え方が適切かと思います。

<ものづくりから科学的な市場情報分析へ>
委員:私自身は、貴学はやはりものづくりで貢献すべきだと思います。そのものづくりも、昔と違ってやはりメカから制御、それが統合された形になっており、非常に難しい世界が始まっています。市場での販売をやっているのは基本的には文系の人ですが、市場の情報をどういうふうに科学的に解析しながら次の商品に結びつけるのかというところが弱いと思います。そういうところにまで工学出身者が貢献していかないといけないと思います。だから、まだまだ広い世界があると思います。そこで貢献できれば、こんな分類なんか気にしなくてもいいと私は思います。

≪中京地域に貢献することにより世界トップを狙うことが本学の方向性≫
学長:私としては、やっぱり中京地域に貢献することにより世界トップを狙うことも卓越した工学系大学としてのミッションではないかと思っています。その点をもっと発信すべきだという貴重な御意見をどうもありがとうございました。

テーマ2 国立大学としての名工大の経営について

<法人化の現状>
委員:法人化の目的というのは、単純ではないが、それまでの国家公務員で構成される国立大学の自由度をもっと上げて、世界に伍していけるような自由闊達な教育研究ができるような制度をつくることが一番の主眼だったと思います、しかし、そうはなっていない。1%ずつ運営費交付金をカットしていくというのは、これは別としても、法人化してから自由度が増しているわけじゃないです。むしろ、教育研究に割くべき時間が、限られた全体の内でより少なくなってきているように思われます。そのような中でも、大学がどんな工夫をしていったらいいのかということを、とりあえずは考えないといけないと思います。

<大学として自由なことができるような経済力をつけること>
委員:日本のこれからの社会のあり方を考えると、人口が減ることは間違いないことですし、高齢化もどんどん進みます。そういう中でやはり存在感を発揮していくためには、これまでと違ってユニークな人、思いもかけなかったような発想で研究する人、成果を出せる人を育てる必要があります。そのためには、国立大学としても、自由なことができるような経済力をつけること、大学が一緒になって科学技術面に限らず、教育面、文化面に、ユニークなものをつくっていくことが必要です。これがお金にもなり知的財産権で保護されることにもなって、それが一つの大学の大きな財産にもなり得ます。

<工科大学の強みを生かし戦える経済力をつける>
学長:確かに、自由にやるためには、経済力をつけないといけないと思います。そのために工科系大学としての強みをどう活かせるかどうか、大変重要な点です。ありがとうございました。

テーマ3 名工大に期待する人材育成について

<実践型の学生を育てるような教育カリキュラムを>
委員:最近の新入社員は、地頭が非常に良いのです。我々が入社したときに比べると、圧倒的に偏差値は高いのですけれども、受動的な人が多くて、新しいことにチャレンジしたがりません。何かを与えられた場合には一生懸命120%で取り組み、how to doはできますが、what to doはできません。これからはクリエイティブな仕事をやっていく人間をどうやって育てるのか、ということが企業としても課題となっています。
インターンシップなどでは受け身の教育ではなく、何か課題を与えてやっていくというのは非常に良いことだと思います。今回、創造工学教育課程もそうだと思いますけど、一点機械だけじゃなくて電気も化学もとか、弊社では「機電一体」という言葉が出ます。今までの機械物が頭脳を持つようになる、そういう製品開発がこれから重要になってくると思います。
会社においては1人では何もできませんので、異業種の人文社会系とも交流できる人材を求めています。

<起業の重要性>
委員:海外進出や技術革新の進展に伴って、自由で有能な技術者、オープンマインドを持った者なども必要になってきています。また、重要なのは起業人材です。多数の研究室があるわけですから、先生とともに「業」を興すような起業精神、あるいは経営センス、あるいは外国語運用力が必要です。そういう盛りだくさんの要請に応えるために6年一貫教育になることを大変期待しています。生産拠点が海外に移されるという現実を直視した上で、大学にお願いしたいのは、英語のような道具の部分と技術だけじゃない起業マインドというものも重要です。

<突き抜けた人材の育成を>
委員:これまで工学部が教育をして社会に出してきた技術者あるいは研究者は、非常に程度はそろっていて水準の高い人が多いけれども、もう一つ突き抜けた発想ができる人がいないと、いろいろな場所で言われています。

<自立型人材が必要>
委員:自立型人材、自分のほうから進んで動く人材が過去以上にますます求められる時代がやってきたという感覚です。研究テーマでも企業との産学連携でも、グローバルを意識せざるを得ない状況です。そういう中で活躍できる人材をぜひお願いしたいです。

<異端が排除されない大学を>
委員:例えば、アイフォンの部品はほとんど日本の企業がつくっているのに、利益はほとんどアップルに持っていきます。これは卓越した経営者あるいは発想をするリーダーがいないからだと言われています。しかし、それは教育の欠陥というよりも、変わった人、異端の人をなかなか許容しないという社会を我々がつくってきたことの結果でもあろうと思います。したがって、あまり大学だけでどうこう言うことはできないのですが、少なくとも大学だけは、異端が排除されないところであってほしいと思います。大学の自主というのはそのためにあるのだというようなことも教わりましたが、大学も効率が重視されて、先生も学生も余裕がなくなってきています。そのような中で世界に誇れるような、世界がびっくりするような発想を持った学生をつくれと言われても、なかなか難しいと思います。

<ユニークな発想には人文社会系なども重要>
委員:特に工学系の単科大学だから余計にそう思うのですが、様々な分野に感度が高くて関心を持つような学生を育てていただけるといいなと思います。そのために、具体的には、工学とは関係がないと思われるような分野、人文社会系の分野を充実させること、そして工学教育だけでは発想できないような、ユニークなことを発想したり、思いついたり、あるいは解決方法を見出すことができるような人材を育成していただきたいと思います。

<社会が要請する人材育成に真摯にとりくむ>
学長:大変貴重な御意見を頂きまして、ありがとうございました。
本学が昨年採択された国立大学改革強化推進補助金事業では、「中京地域との融合」を看板にかかげております。来年4月からは5学科・5専攻、創造工学教育課程という新たな教育体制に移行し、これからの社会が要請する人材育成に真摯にとりくむ所存です。
本日のみなさまのご意見を今後の取り組みに、ぜひ生かさせていただきたいと思います。




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