取組紹介 - 高齢者の慢性腰痛に対する新しい治療法の開発に貢献
カテゴリ:ニュース|2024年08月19日掲載
電気・機械工学類の森田良文教授の研究室では、医工連携により医療やリハビリテーションの支援デバイスに関する研究を行っています。
このたび、森田研究室では、国立研究開発法人国立長寿医療研究センターの整形外科部の酒井義人部長らの研究グループと約12年間の共同研究を経て、固有感覚機能診断治療装置を開発しました。固有感覚機能の治療機器(特許第7454803号)として特許も取得しています。
振動刺激による固有感覚機能診断治療装置
近年、固有感覚機能の低下が腰痛の一因であるとの研究結果が見られます。固有感覚機能とは体の各部分の位置、動き、筋収縮の状態などを感知する深部感覚でヒトの姿勢を制御する重要な機能です。例えば目を閉じても足の位置や体の向きがわかるのもこの機能が働いているからです。この固有感覚を司るのは筋紡錘やパチニ小体といった固有感覚受容器が機能して、脳で感知することなく骨格筋と脊髄の間で反射的に調和を保っています。
固有感覚受容器による骨格筋と神経の調和
森田研究室が開発した装置は30-240Hzの振動刺激を体に連続的に与えた状態で重心動揺計により生体反応を評価することで固有感覚機能が診断でき、機能低下した受容器に対して呼応する周波数刺激を付与することにより固有感覚機能が向上します。実際に、この治療装置を固有感覚機能の低下を伴う慢性腰痛患者に使用することで、腰痛と固有感覚機能の改善が期待されることが実証されました。研究グループは、現在、高齢者が自宅でも検査や治療が行えるデバイスの開発を行っており、今後も、工学的支援が慢性腰痛の疼痛治療の一助となるべく取り組む予定です。